ユニークな動物が数多く生息するオーストラリアでは野良猫が深刻な脅威となっています。
オーストラリアの猫はヨーロッパの入植者が持ち込んだもので、現在いる飼い猫および野良猫はそれらの子孫にあたります。
鳥、爬虫類、小型哺乳類などの固有種を殺す野良猫に対しては、政府が対策をとっているものの、望むような結果は得られていません。
タスマニア大学の研究者は、野良猫が地元の固有種にとってどれだけ危険な存在であるのかを調査によって導き出しています。
固有種が野良猫に遭遇する確率は、在来の捕食者の少なくとも20倍以上です。
野良猫は同じ場所を何度も行き来して固有種を殺す
タスマニア大学のロウィーナ・ハマー氏を中心とした生物学者チームは、野良猫と在来の捕食者の行動の違いを明確にするため、島の中央部で広範な調査を行っています。
固有種を襲う捕食者は野良猫だけでなく、オーストラリアの在来種のなかにも存在します。
しかしこれまでバランスが取れていた捕食者と被食者の関係性は、外来種の猫がやってきたことで一気に崩壊しました。
現在オーストラリアの野良猫は、毎年20億匹以上の野生生物を殺しています。
調査では、タスマニア島中央部の4か所で捕獲した野良猫34匹と、在来の捕食者であるフクロネコ(Spotted-tailed quoll)14匹にGPS装置を取りつけ、行動範囲や好みの場所などを記録していきました。
フクロネコは猫と似たような体長で、食の傾向もほとんど同じです。
GPS装置は5分または15分毎にデータを送信し、1カ月後に安全に取り外されました。
収集されたデータは、土地に生息する野生生物の分布や数と照らし合わされ、野良猫とフクロネコのどちらが危険な捕食者であるかの判断に使われました。
調査対象となったフクロネコ「Spotted-tail quoll」 (joshua cunningham/Flickr)
分析の結果、野生生物が野良猫に遭遇する確率は、フクロネコの20倍から200倍になることがわかりました。
調査地域の猫の数は1㎢あたり約9匹で、フクロネコは約0.4匹でした。
猫とフクロネコはともに開けた牧草地は避けましたが、好みのエリアは異なりました。
猫は一貫して植生密度が低い森林の端を好むのに対し、フクロネコはもっぱら丈の高い草木のある森の中で活動しました。
遭遇確率の違いは、単に絶対数によるものではなく、猫が好みのエリアを執拗に行き来するのが理由です。
猫の行動圏自体は狭く、移動距離ではフクロネコと大差はありません。
しかし猫はフクロネコの2倍以上の頻度で、同じ場所を訪れました。
これは野生生物が野良猫の脅威を回避できたとしても、再び襲われる可能性が高いことを意味しています。
一方フクロネコは獲物の獲得に失敗した場合、別の機会を探します。
オーストラリアの野生生物は、在来の捕食者の狩りのパターンに適応してきましたが、18世紀後半から住み着いた野良猫の習性については学習できていません。
また森林を伐採して作られる農場は、野生生物が身を隠す場所を奪っています。
研究を主導したハマー氏は、「猫は全てを食べあらゆる環境にいます。彼らは印象的ですが、壊滅的です」と述べています。
研究結果は、固有種を保護する政策を変える可能性があります。
現在野良猫の多くは、毒餌やハンティングといった方法で駆除されています。
しかし猫の繁殖力は強く、またオーストラリアには2000万から3000万匹の野良猫がいるため、こうした方法は根本的な解決にはなりません。
調査が示すように、猫は狭い範囲を何度も行き来する習性をもち、野生生物が身を隠せない草地を好みます。
固有種を守るには、猫を駆除するだけでなく、植物や森林を増やし避難場所を作ることも必要です。
研究結果はProceedings of the Royal Society B: Biological Sciencesに掲載されました。
何とかして共存できる方法はないのかな
猫の習性を理解する前に固有種は絶滅してしまうだろう
Reference: The Guardian