ニュージーランド南島のオタゴ地方にある町ダニーデン住むダイバーが、絶滅危惧種であるアシカ「ニュージーランドアシカ(New Zealand sea lion)」を傷つけたとしてニュースになっています。
先日ダイバーのマット・クレーマー氏がダニーデンの沖で、ニュージーランドに固有のアワビの一種「パウア」を取るためパートナーと海に潜っていたところ、突然現れた2頭のアシカに襲われました。
クレーマー氏とパートナーは岸に向かって懸命に泳ぎましたが、アシカは2人を30分以上にわたって追いかけ続けました。
岸にまであがってきたアシカはフィンに食らいつき、彼のパートナーはパニック状態に陥ります。
クレーマー氏はパートナーの状態を見てとっさに、ホホジロザメに襲われたときのために用意していた護身用の槍を片方のアシカに何度も突き刺し、アシカはようやく海に戻っていきました。
彼がそのときの状況を自身のFacebookに書いたところ、様々な反響を呼ぶことになりました。
クレーマー氏は投稿の中で、「アシカが実際に自分たちを攻撃する恐れがあった」と書き、パートナーを守るためには槍で突き刺す必要があったと自身の行動を正当化しました。
またアシカの体長が2メートル以上もあり、自分たちよりもはるかに大きかったと振り返っています。
命の危険を感じ“やむを得ず”絶滅危惧種であるアシカを攻撃した今回の事件に対しニュージーランド警察は、「調査中ではない」とする声明を発表し、またニュージーランドの自然保護局(Department of Conservation-DOC)も、詳しいことについてはコメントできないと話しています。
人間とアシカの間にある誤解
Image by Montevideo from Pixabay
ニュージーランドアシカは世界で最も希少なアシカの種の1つで、現時点での生息数は約12,000頭とされています。
現地の法律ではニュージーランドアシカを殺した場合、最高2年の懲役、または最高で250,000ニュージーランドドルの罰金が科せられます。
アシカを守る活動をしている保全団体は、この事件に対し怒りをあらわにしています。
動物の保護を目的に活動している現地の非営利団体「ニュージーランドアシカトラスト(New Zealand Sea Lion Trust)」は、事件を受けて声明を発表し、アシカは元来好奇心の強い動物でありダイバーに関心を示し寄ってくることがあるとして、クレーマー氏の行動は過剰な反応であると強く非難しました。
トラストのジョーダナ・ホワイト議長は、クレーマー氏がどれほど怖がっていたのかについて共感はできるとしながらも、アシカの好奇心を表す典型的な行動に過剰に対応した彼の行動については容認できるものではないと述べています。
ホワイト議長は、人間がアシカと対話する方法について学ぶことが重要だと話し、また水中でアシカに出会った場合には、「落ち着いて彼らを無視するように」と助言しています。
DOCのレンジャーの一人ジム・ファイフェ氏は、人間とアシカは互いの行動を異なる方法で解釈する傾向があり、それが種の間における誤解につながっていると述べます。
ファイフェ氏は、人間の持つ偏見や恐れは、アシカを攻撃するといった間違った行動を正当化する可能性があると指摘しました。
また現実のアシカはただ自分たちのスペースが必要なだけであり、決して人間を攻撃しようとしているわけではないとして、その行動に理解を示すよう求めています。
アシカに槍を突き刺したクレーマー氏は地元紙に対し、自分の行動を“喜んで擁護する”と語っています。
勝手にアシカの領域に踏み込んでるのに槍で突くなんてひどいよ!
アシカは人間が気になって仕方がなかっただけだと思う……
References: CNN