元々その地域に生息していない動植物は、「侵略的外来種」として扱われる可能性があります。
外部から持ち込まれた動植物のほとんどは環境に適応できず死滅しますが、一部の種は天敵の不在によって在来種を絶滅させるほど広範囲に定着します。
在来種を保護するには外来種の駆除は欠かせない仕事です。
しかしどの種が選定され、また多くの関心を集めるのかは種によって異なります。
外来種の持つカリスマ性は、新しい土地での定着率に大きく関係しています。
外来種のカリスマ性は研究や駆除に大きな影響を与える
チェコ科学アカデミー生物学センターと、ドイツのライプニッツ淡水生態学および内陸水産研究所によって行われた研究は、外来種の管理の仕方がその見た目に左右されていることを明らかにしています。
人間が地球を自由に行き来するようになって以降、外来種は多くの在来種を絶滅させてきました。
現在でも外来種は世界各地で問題を引き起こしていますが、研究や駆除に使われる資金や労力は種によってまちまちです。
研究では、外来種の持つカリスマ性(見た目や生態)がその管理にどのような影響を与えているのかを評価しました。
その結果、一般的に見た目が良いと考えられている種ほど、新しい地域に根付く傾向にあることがわかりました。
外来種のカリスマ性については長年にわたって研究がなされてきており、好ましい見た目や生態が人間の知覚に肯定的な反応を与えることが示されていました。
今回の研究はそれを改めて確認した形となります。
研究は外来種の持つカリスマ性の例をいくつか挙げています。
一つ目は、日本における「アライグマ」です。
北アメリカ原産のアライグマは雑食で、農地や住宅地にも平気で顔を出し、また狂暴で感染症の媒介者でもあります。
この本来害獣であるアライグマは、日本では高い人気を誇っています。
これは、その可愛らしい見た目や食べ物を洗うという奇妙な習性、さらにはテレビアニメ「あらいぐまラスカル」などの影響によって、人々の認知が変わったことが理由です。
二つ目はイタリアで外来種として扱われている「トウブハイイロリス」です。
トウブハイイロリス (Willamette Biology/Flickr)
北アメリカ原産のトウブハイイロリスも適応力が高く、住宅地や農園に出没し、在来の動植物に被害を与えています。
しかし過去に行われた駆除プログラムは、動物愛護団体の激しい反対キャンペーンによって失敗に終わっています。
このキャンペーンでトウブハイイロリスは、愛らしい漫画のキャラクターとして描かれました。
三つ目はオーストラリアに侵入した、ヨーロッパ原産の植物「シャゼンムラサキ」です。
この植物は強い毒性を持ち、周囲の植物や家畜などに被害を与える一方、紫色のきれいな花を咲かせるため、「パターソンの呪い (Paterson’s curse)」と呼んで忌避する地域もあれば、「救済のジェーン (Salvation Jane)」と呼んで親しんでいる地域もあります。
これらの例は、人々の外来種に対する考え方が、見た目の印象によって変わることを示唆するものです。
「Frontiers in Ecology and the Environment」に掲載された研究の著者の一人で、チェコ科学アカデミー生物学センターのイヴァン・ヤリッチ(Ivan Jaric)氏は、「問題のある種が愛らしいとみなされているという事実は、状況の管理を難しくする」と述べ、外来種の持つカリスマ性は、自然保護対策の実行を妨げる可能性があると指摘しています。
研究ではカリスマ性のある種――観賞用の植物や水族館の魚、エキゾチックなペットなど――は人々によって持ち込まれやすく、またその外見ゆえに、環境に定着する傾向にあることが明らかになっています。
見た目の良さは、駆除や研究プログラムへの資金提供に影響を与えます。
全ての外来種は在来種を脅かす可能性があるため、その管理はできる限り平等に行われる必要があります。
しかし現状、見た目の良い外来種は多くの研究資金を集める一方、必ずしも積極的な駆除の対象にはなっていません。
研究者は、外来種の研究の優先順位は、生態学的および経済的影響を考慮すべきであるとしながらも、「公共の関心はカリスマ性のある外来種に集中しており、それは知識の一方的なギャップにつながる」と指摘しています。
絶滅危惧種の保護活動も見た目が重要な要素なんだって
外来種の見た目だけじゃなく影響についても知ってもらう必要があるな
References: EurekAlert,Phys.org