海岸沿いや川辺に生息するチドリの種は、巣を地面につくります。
親鳥は周囲の気配に敏感で、危険を察知すると巣を離れ、敵が自分に関心をもつように仕向けます。
捕食者から卵を守ろうとするこうした行動は、子孫をつないでいくために培われてきたチドリの本能です。
しかしこの本能は環境によって過剰に発揮されることがあり、皮肉にもそれが卵の死につながります。
スペインの研究者はビーチでの観察を行い、チドリが周囲の生き物から大きなプレッシャーを受けていることを発見しています。
特に人間と犬のペアは、たとえその気がなくても、親鳥を必要以上に警戒させます。
人間と犬の存在はシロチドリの親を警戒させる
バレンシア大学の生態学者であるミゲル・ゴメス・セラーノ氏は、南ヨーロッパの海岸沿いに生息するシロチドリの行動を観察し、人間や犬の存在が鳥に与える影響を明らかにしています。
シロチドリはその習性から、一定の範囲に何かが近づくと警戒態勢に入り巣を離れます。
この行動は卵の温度の低下につながり、頻繁に起きた場合、出生率に悪影響を及ぼす可能性があります。
スペインの4つのビーチで行われた観察では、シロチドリの親が最も警戒心を見せる組み合わせを知るため、巣の近くを通った人間や犬の行動を記録していきました。
親鳥を最も警戒させたのは、犬だけが砂浜で遊んでいるケースで、この場合親鳥はほぼ100%の確率で巣を離れました。
次点は人間と犬のペアで、近くを通り過ぎただけのケースでは80%、砂浜で遊んだケースでは93.8%の確率で巣を離れました。
一方人間だけの場合、親鳥はそれほど警戒心を見せず、飛び立つ確率は、近くを通った時で12.9%、砂浜にいる時で47.6%でした。
親鳥が巣を離れた回数は観察期間中714回で、このうち犬が関連する全てのケースで、リードが使用されていませんでした。
シロチドリの巣と卵 (Romy Rice/CC BY-SA 4.0)
人間も犬もシロチドリを狙っているわけではありません。
しかし警戒心の強い親鳥は、何か(特に犬)が近くを通り過ぎる度に巣を離れました。
このような環境はシロチドリを常に緊張状態に置き、卵を守るという仕事をおろそかにさせます。
ひなを孵すには、3週間ほどの間、卵を37度から38度の温度で保ち続ける必要があります。
調査では、親鳥が巣を離れる回数が多くなるほど、卵の温度に変化が起きやすくなることが確認されています。
今後温暖化がさらに進んだ場合、卵はすぐに高温となり、生まれるひなの数は確実に減少します。
ゴメス・セラーノ氏は、「チドリのような沿岸に生息する鳥を受け入れられるビーチはますます少なくなっており、保護について考える必要がある」と述べています。
シロチドリは人間が近くを通ってもあまり警戒心を見せません。
これは人間が卵を襲う敵ではないことを学んだためだと考えられます。
一方、犬を見たシロチドリは非常に警戒し、一種のパニック状態に陥ります。
ほとんどの飼い主は、自分の犬が見知らぬ小さな鳥の生活を乱していることを知りません。
ゴメス・セラーノ氏は、「犬は浜辺を歩く人間に比べて不釣り合いなほど鳥に影響を与える」と述べ、ビーチへの犬の侵入について、「少なくとも繁殖シーズンは制限されるべきだ」と指摘しています。
研究結果はIbisに掲載されました。
リードをしていればそれほど影響はないみたいだよ
地面に卵があるから親鳥も必死なんだね
Reference: The Guardian