新型コロナウイルスの感染拡大により、一部の都市はロックダウン(都市封鎖)に陥っています。
ロックダウンによって人間の活動は縮小あるいは停止しますが、これは動物たちには当てはまりません。
イギリスの複数の動物園では、ロックダウン後の混乱のなかにあっても飼育員が変わらず出勤し動物の世話をしています。
しかし入園客がいなくなったため、どれだけの期間世話を続けられるのかは不透明な状況です。
ロックダウンにより閉園を余儀なくされた動物園の現状
ウィンチェスターにあるマーウェル動物園では、一部のスタッフが動物の世話を続けるために、動物園の敷地内にある空のコテージで寝泊まりをしています。
政府の要請でスタッフの数は必要最低限しか認められていないため、動物の世話は平常時よりも困難になっています。
コレクションマネージャーであるイアン・グッドウィン(Ian Goodwin)氏は、現場のスタッフは、社会的距離のガイドラインに従いつつ動物のケアに一日中従事していると説明したうえで、飼育員の数は動物の数と比べて足りない状態にあると話しました。
マーウェル動物園は、飼育員と獣医およびその他のスタッフが引き続き勤務することで、園内の動物たちは平常時と同じレベルのケアを受けられるとする一方、動物園の運営は、当日券や園内での物販の売り上げなどに依存しているとして、寄付などの支援を人々に求めています。
動物園では現在、園内の動物を映したライブカメラの映像を公開しています。
Credit: Twycross Zoo
ロンドン動物園や、レスターシャーにあるトワイクロス動物園でも飼育員が敷地内に住むようになっています。
ロンドン動物園は3月21日、トワイクロス動物園は3月23日から閉園しています。
ロンドン動物園で飼われているピグミーゴートは、いつもと様子の違う動物園に戸惑いながらも、二度とやってこないかもしれない訪問者をずっと待ち続けています。
ダドリー動物園のデレク・グローブ(Derek Grove)園長は、「この園にはオランウータンやチンパンジーがいるが、彼らは日常の環境が変わることを喜ばない」とし、飼育員が園内に住むなどといった行動は動物たちに何らかの影響を与える可能性があると指摘しました。
ダドリー動物園やロンドン動物園では、動物が環境変化に影響を受けていないかをチェックするため、スタッフが車や自転車などを使って園内をくまなく見回っています。
An important announcement from Zoo Director Derek Grove.
Please read: https://t.co/NGrjuoTtgt pic.twitter.com/RcO2a6cSyn
— Dudley Zoo (@dudleyzoo) March 22, 2020
ロックダウンの際企業や工場の従業員は家に帰るだけで済みますが、動物園の飼育員の場合同じようにはいきません。
ノーフォークにあるバナム動物園のゲイリー・バッターズ(Gary Batters)園長は、動物園の飼育係が主要な労働者とみなされていない現状を指摘したうえで、動物の世話を継続的にこなしながら、育児などの家庭での問題も処理しなければならない従業員にとって、現状は極めて厳しいものであると話しました。
動物園の運営が危機的な状況になることは過去にもありました。
20年前に口蹄疫の流行で2カ月近く閉園したエディンバラ動物園のダレン・マクギャリー(Darren McGarry)氏は、今回のコロナウイルスによる閉園は前回のときとは状況が異なると指摘します。
口蹄疫は動物だけがかかる伝染病ですが、コロナウイルスはそうではありません。
マクギャリー氏は、「スタッフは常にウイルスで病気になる可能性がある」と述べ、動物園は資金面も含めた大きな危機に直面していると強調しました。
今回取り上げた全ての動物園は3月21日から23日の間に閉園しています。
現在動物園では、動物たちの継続的なケアを行うため、寄付や年間パスの購入などを通じた幅広い支援を募っています。
人は逃げ出せても動物園の動物は逃げられない……
楽しい動物園が復活するためにも支援の輪が広がってほしいねー
References: The Guardian