鳥の卵には様々な色があります。
長い間研究者たちは、なぜ鳥の種や住む地域によって卵の殻の色が異なるのかについて疑問を抱いてきました。
あらゆる自然現象に何らかの意味があるのだとすれば、殻の色が違うのにもそれなりの理由があるはずです。
新しい研究は卵の殻の色を細かく分類することでその謎に迫っています。
卵の色は生まれる地域の寒暖によって決まる
鳥の卵の殻の色は、大きく分けて2種類に分類されます。
一つは緑の色素を持つ色で、もう一つは赤茶色の色素を持ちます。
これらの色は殻の内側にある炭酸カルシウムの成分とともに、ニワトリの卵のような真っ白な色から薄暗い茶色のようなものまで様々に変化します。
これまで科学者たちは卵の殻の色が異なるのは、捕食者から守るためや、太陽の有害な紫外線から雛を守るため、また親鳥が自分の卵であると認識しやすくするため、などのいくつかの推論を出してきました。
しかしどれも決定的ではなく、鳥の卵の殻についての議論は科学者たちの間で熱いトピックであり続けています。
そんな混沌とした殻の色についての議論に新しい研究結果が加わろうとしています。
科学誌Nature Ecology and Evolutionに掲載された研究を主導した、米国ロングアイランド大学のダニエル・ハンリー博士たちの研究チームは、世界中の634種の鳥の卵とその色を調査し、そこに一定の傾向があることを突き止めています。
チームが見つけたのは、鳥が卵を産む地域の違いが卵の色に関係しているという点でした。
部分的な例外はありましたが、ほとんどの場合、寒い地域の卵は暗い色をしており、より暖かい地域の卵は明るく様々なバリエーションに富んでいました。
また同じ地域に住む同じ種類の鳥たちは、ほぼ似たような色の卵を産むこともわかりました。
Image by Barbara Fraatz from Pixabay
チームは卵の色の分布を記した世界地図を見ながら、寒い地域で色が濃いのは、その地域の日照時間に関係があると考えました。
基本的に、暗い色は明るい色に比べてより熱を吸収することができます。
胚の中にいる雛が健康で孵るためには卵の温度が一定に保たれている必要があります。
しかし日照時間が短く低温な地域に住む親鳥ができることは、せいぜい外から卵を暖めることくらいです。
もし卵の殻自体にも低温に耐える、もしくは熱を長い間保持できる仕組みがあれば、雛が孵る確率はずっと高くなります。
寒い地域の卵の色が暗い色をしているのは、太陽の熱を吸収しやすくし雛を守るためだと考えられています。
一方、暖かい地域の卵の色は明るくその種類も豊富でした。
これは雛のための温度調節が必要ではなく、別の脅威――捕食されるリスクや菌などによる影響――から雛を守るために、殻の色や強度が変化したのだと考えられています。
また研究チームは長年議論の的であった、殻の色と太陽からの有害な紫外線との関連についても調べました。
実験によって、暗い色の卵の方が紫外線をより多く遮断する傾向にあるものの、明るい色の卵との有意な差は認めらないことがわかり、研究チームはどんな卵であっても殻には紫外線を遮る効果があると結論づけています。
今回の研究は、鳥たちがその住む地域や環境に合わせて卵の殻の色を変化させていることを明らかにしました。
しかしハンリー博士は、「世界的な気温の上昇によってこれまで鳥たちが行ってきた適応の方法が変わってしまう可能性がある」と述べ、気候変動が特定の環境に適応してきた鳥などの生物に与える影響について懸念を示しています。
ハンリー博士の独創的な研究は古くからの議論に一定の答えを提供しましたが、まだ分かっていないこともあります。
オーストラリアのマッコーリー大学の鳥類生態学者であるサイモン・グリフィス教授は、卵の殻の色だけでなく、その模様や背景(巣や巣の置かれた場所など)との関連性についてもさらなる研究が必要であると指摘しています。
また同じ鳥が産んだ卵でも、斑点があるものとないものがあるのはなぜなのか、といった疑問について調べるのも今後の課題になるだろうと話しています。
地球のあらゆる地域の鳥たちが寒暖の差によって卵の殻の色や強度を変えていたのは驚きです。
科学者たちが指摘するように、近い将来、気候変動は鳥たちの産む卵の殻に何らかの影響を与えるでしょう。
しかし彼らがこれまでも外の環境にうまく適応してきたことを考えると、そんなに心配することはないのかもしれません。
鳥たちの、地域や環境によって卵の色を変化させるその適応力は、日々変わりゆく世界に困惑している人類が学ぶことのできる自然の知恵です。
生まれる地域や気温の差によって殻の色が変わるんだね~
どんな環境にも適応するその柔軟性、見習いたいものだな
References:The Guardian