英国エクセター大学の研究グループは、都市部に生息するカモメの生態に関する興味深い実験を行っています。
対象となったカモメは近年都市環境で繁殖し始めている「セグロカモメ (Herring gull)」で、この研究チームは以前にも、視線を感じたセグロカモメが、人間から食べ物を奪うのを躊躇することを発見しています。
都市部に住み着いたセグロカモメが生きていくには、人の残り物を効率的に得る必要がありますが、彼らがどうやって有益な食べ物とそうでないものを区別しているのかはよくわかっていません。
今回研究者は、セグロカモメが人間を観察し、その情報を使って食料を得ていることを突き止めています。
カモメは食べ物を扱う人間を観察している
エクセター大学のマデリン・グーマス(Madeleine Goumas)氏たちの研究チームは、都市部に生息しているセグロカモメを対象に2つの実験を行っています。
最初の実験では、用意された2つの食べ物のうちの1つに人間が触れた場合、カモメたちがどちらに興味を示すのかを調べました。
以前の研究では、カモメは人間の視線に敏感であることがわかっています。
食べ物を扱う人間の姿を見た場合と、そうでない場合との間に有意な差があれば、カモメが都市に進出できた理由を説明することができます。
実験は町の中にいるカモメの視界の範囲内で行われ、まず2つのバケツを地面に置き、その中に食べ物を設置することから始めました。
次に研究者の一人が、カモメを刺激しないよう注意しながら片方のバケツから食べ物を取り出し、それを20秒間手で触れてから再び元に戻します。
もう一方のバケツには触れていません。
その後研究者はバケツだけを持って約10m後退し、カモメがどちらの食べ物に興味を示すのかを観察しました。
結果、38羽のセグロカモメのうち24羽が食べ物に興味を示し、そのうちの19羽が人間が触れた食べ物をつつきました。
バケツに入っていたものが両方とも食べ物であったにもかかわらず、カモメの79%は、人間が直前に触れたものに対して強い興味を示しました。
これは、カモメが人間の行為を観察し、そこから安全な食べ物の手がかりを得ている可能性を示唆しています。
都市環境に順応するセグロカモメ Image by Frauke Feind from Pixabay
次に研究者は別の日の別のカモメ群に対し、食べ物を模した物体を使って同様の実験を行いました。
最初の実験ではイギリスの伝統的な焼き菓子であるフラップジャックが使われましたが、今回の実験では青いスポンジが使われました。
対象となったセグロカモメ41羽のうち、まず32羽がスポンジに近づき、最終的に23羽がどちらかのスポンジをつつきました。
そのうち人間が触れたスポンジをつついたのは15羽で、この確率(65%)は、統計的にはほとんど偶然の範囲に収まる数値でした。
これらの結果は、セグロカモメが人間の行動を観察しているだけでなく、そのなかでも食べ物をより重要視していることを表しています。
研究著者の一人であるエクセター大学のローラ・ケリー(Laura Kelley)博士は、「カモメは人々が落としたり触れたりした食べ物を見た際に、それらに近づく可能性が高い」と述べ、この結果は、食べ物を適切に廃棄することの重要性を浮き彫りにしていると付け加えました。
セグロカモメの野生での生息数は全体で減少傾向にある一方、都市部では逆に増加しています。
カモメは人間の食べ物を得ることで、都市環境での生活に慣れ始めています。
ケリー博士は、不用意にカモメに餌を与えると関係性が強化されると指摘し、特に都市部は農村部と比べて食べ物が豊富なため、カモメが順応してしまう可能性があると話しました。
グーマス氏は今回の実験結果から、セグロカモメには、人間からの手がかりを利用し都市環境に順応する能力があると結論づけています。
研究結果はRoyal Society Open Scienceに掲載されました。
人間を観察してどれが安全な食べ物なのかを判断してるんだねー
屋外で何かを食べるときには、周囲にカモメがいないか確認しよう……
References: Phys.org