カナダオオヤマネコの生息数が減少、山火事、気温上昇、雪の少なさが原因

動物
(Eric Kilby/Flickr)

米国ワシントン州立大学の研究者は、州内に生息している「カナダオオヤマネコ」の大規模調査を行った結果、その数が急速に減少し始めていると報告しています。

カナダオオヤマネコは、カナダやアラスカおよびアメリカの一部の州の寒冷地域に生息する大型の猫で、絶滅の危険はないとされているものの、近年の森林破壊や積雪の減少などの影響により生存が脅かされています。

カナダオオヤマネコの生息数の減少には、気候変動が大きく関係しています。

 

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カナダオオヤマネコは気候の変化に敏感な動物

 

ワシントン州立大学のトラヴィス・キング(Travis King)氏たちの研究チームは、人前になかなか現れることのないカナダオオヤマネコの実態を調査するため、政府の職員、自然保護団体、ハイカー、市民科学者などの多くのボランティアと協力し、州北東部の生息域にくまなくリモートカメラを仕掛けました。

175の監視地域に仕掛けられた650個のカメラは、合計で200万以上の画像を撮影しました。

大学のボランティアが膨大な画像の仕分けを行った結果、カナダオオヤマネコの姿は29の地域でしか確認されませんでした。

 

カナダオオヤマネコはアメリカで長い間、絶滅が危惧される動物に指定されていましたが、政府は2018年に指定の解除を検討すると発表しました。

しかし今回の調査結果は、カナダオオヤマネコの生息数が想定よりもずっと少なくなっている可能性を示唆しています。

 

Journal of Wildlife Managementに掲載された研究の著者の一人で、ワシントン州立大学の環境学の教授であるダニエル・ソーントン(Daniel Thornton)氏は、この結果はカナダオオヤマネコだけでなく、他の多くの寒冷地域に適した動物種にとっても憂慮すべきものであると述べます。

 

 

カナダオオヤマネコは行動範囲が広く、また寒くて雪の多い環境が必要な動物です。

ソーントン教授は、「カナダオオヤマネコは気候変動について知らせる歩哨のような存在であるだけでなく、他の同じような、気候に敏感な種に何が起こっているのかを知らせる早期警告システムでもある」と話しています。

(Eric Kilby/Flickr)

 

研究者はカナダオオヤマネコの減少の原因に、山火事、気温上昇および雪の少なさを挙げています。

ワシントン州の北東部の森林は過去24年間にわたって大規模な山火事の被害を受けており、カナダオオヤマネコとその餌となるカンジキウサギ(snowshoe hare)の生息地は破壊され続けてきました。

カナダオオヤマネコは雪の上で狩りをしたりそこで生活することに特化しているため、気温上昇による雪の減少は生息域の縮小につながります。

また気温の上昇はカナダオオヤマネコの生息域に、より温暖な地域に適応しているボブキャットやクーガーなどの大型の猫の種を招き入れる結果をもたらします。

ソーントン教授は、「カナダオオヤマネコは温暖化によって変化する要因(雪の状態、気温、火災)に強く反応している」と述べ、今回の研究結果は、ワシントン州における彼らの生息域が縮小しているという強力な証拠になると強調しました。

 

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カナダオオヤマネコは人里離れた場所に住んでいるため、実際の個体数を把握することが難しい動物です。

ワシントン州魚類野生生物局による1980年のデータに基づく分析では、当時の州内にはカナダオオヤマネコ238匹が生息できるだけの環境がありましたが、2017年には38~61頭を養えるだけの範囲に縮小しています。

現在研究者はカナダオオヤマネコのより正確な生息数を把握するため、今回用いたカメラトラップの手法を、モンタナ州の生息地であるグレイシャー国立公園で使用する計画を立てています。

 


 

 

せつな
せつな

カナダオオヤマネコはカナダだと毛皮のために狩られることもあるとか……

かなで
かなで

生息地がなくならないように温暖化をストップさせなきゃ!

 

References: Washington State University