モンゴルとイギリスの鳥類学者たちによって行われた、鳥の長距離移動を監視する「モンゴルカッコウプロジェクト」は、開始から1年後、1羽のカッコウの帰還によって大きな成果を得ることになりました。
2019年の6月、モンゴルの渓谷からGPSタグを取りつけた5羽のカッコウが飛び立ちました。
そのうちの1羽であるオノン(Onon)と名付けられたカッコウは、2020年5月27日、インド、サウジアラビア、そしてアフリカのザンビアにまで移動した後、無事にモンゴルに帰ってきました。
通過した国の数は16、国境を乗り越えた回数は27、そして往復距離は26,000kmにも及びました。
研究者たちは現在、カッコウが遠くまで移動する理由や、鳥が受けている気候変動からの影響を理解するためにオノンの追跡データを分析しています。
カッコウは餌を求めて1日に1,000kmも飛ぶ
オノンを含む5羽のカッコウは去年の旅立ち以降SNS上で人気を集め、多くのファンが動向を見守ってきました。
オノン以外のカッコウは途中で行方不明になったり死亡したりしたことが判明していたため、彼の帰還はインドやケニア、スウェーデンなどのメディアで大きく取り上げられました。
合同プロジェクトに関わった英国鳥類学トラストのクリス・ヒューソン博士はオノンの旅について、「これは驚くほど長い時間をかけた移動だ」と述べ、26,000kmという往復距離は、陸鳥が記録したなかで最長のものの一つであると説明しています。
飛び立つ前のオノン (Mongolia Cuckoo Project/Birding Beijing)
研究者はオノンのデータから、カッコウが追い風を利用して1日あたり1,000kmの距離を移動できることや、そのルートが好物である毛虫の生息域に沿っていることなどを発見しました。
出発地点の渓谷では夏場に毛虫が出現しますが、寒くなるにつれて姿を消してしまいます。
カッコウは毛虫を求めて風に乗り、南のインド、アラビア、東アフリカへと移動していきました。
オノンにはインド経由でアフリカに行く以外にも、赤道直下のアジアやオーストラリアに向かう選択肢もありました。
彼らがなぜアフリカに向かったのかについて研究者は、同じカッコウの仲間であるツツドリとの競合を避けたためであると推測しています。
オノンの旅は、餌を求めて長距離移動をする鳥たちの気候変動に対する脆弱さについて、改めて考えるきっかけになります。
気候変動による環境の変化は、鳥たちの餌となる生き物の分布をも変えてしまうおそれがあります。
モンゴル野生生物科学保護センターのニャンバヤル・バトバヤル氏は、「今回のプロジェクトによって、鳥の飛行ルートや、休憩や食事をしたりする場所を保護する必要性についての認識が高まった」と話しています。
現在オノンは久しぶりに戻った故郷で、自分のなわばりを主張し、交尾の相手を探すことに情熱を傾けています。
オノンは地元の川にちなんで付けられた名前なんだって
モンゴルからアフリカまで行って帰ってくるなんて驚きだな
References: The Guardian