“マニキュアコウモリ”――絶滅危惧種のコウモリを追跡するユニークな方法

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ⓒZSL

イギリスのロンドン動物学会(Zoological Society of London-ZSL)は、キューバで絶滅寸前の状態にある珍しいコウモリの保全活動に乗り出しました。

これはZSLが行っている、発展途上国の保護活動家を支援して地元の希少な動物を長期にわたり研究、保全していく「EDGE of Existence」プログラムの一環として行われました。

EDGE(Evolutionarily Distinct and Globally Endangered)は、世界的に危機に瀕している独特の進化を遂げてきた種のことで、EDGE of Existenceブログラムはこのような種に対しての保護意識を高めるために開始されました。

 

 

Cuban greater funnel-eared bats(キューバ漏斗耳コウモリ)は名前の通り大きな漏斗状の耳を持つコウモリで、以前はキューバ全土に生息していました。

気候や環境の変化などにより一度絶滅が宣言されましたが、1992年にキューバ西部のグアナアカビベス半島の洞窟で生息していることが確認されました。

現在の生息数は750匹未満であり、たった一つの洞窟内でのみ確認されていることからその保全が急がれている状況です。

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「マニキュアコウモリ」――絶滅危惧種を守りつつ追跡調査を行う

 

Image Credit:ZSL

 

希少な動物を守っていくためにはその生態を知るための追跡調査が欠かせません。

相手が空を飛ぶ生き物の場合、通常は腕や首もしくは羽にタグをつけますが、今回ZSLがとった方法は過去に例がないユニークなものでした。

それは4つの異なる色の「マニキュア」をコウモリの爪に塗る方法です。

このマニキュアはコウモリにとって無害な成分で作られています。

 

ZSLのホセ・マヌエル・デラクルス・モラ氏は、従来の方法でタグ付けをした場合コウモリの行動に変化が起きる可能性があることから、「貴重な種を理解するためにできるだけ自然な方法でタグを付ける必要があった」とマニキュアタグ採用の経緯を話しました。

 

各コウモリに個別のマニキュアを塗るのは時間がかかりましたが、この驚くべき動物に近づきそれらについて知ることができるのは素晴らしい特権です。

 

モラ氏はまた「コウモリのように過小評価されている種が、単に“見忘れたから”という理由で科学史に埋もれてしまうことがないようにしなければならない」と述べ、今回の保全活動が地域コミュニティの意識向上につながることに期待を寄せました。

 

キューバ漏斗耳コウモリは蛾やコオロギ、カブトムシなどを主食とし、温度や湿度の高い環境を好みます。

人が飼育することは難しく、現在生息している洞窟の環境が気候変動などにより変化してしまうと全滅してしまうおそれがあります。

ZSLは今回の調査結果によりキューバ漏斗耳コウモリが、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに掲載されるようになることを願っています。

 


 

モラ氏によると世界中のコウモリは、ねぐらの破壊や病気、さらには狩猟によって現在最も絶滅の危機に瀕している動物のグループです。

彼らは昆虫の個体数を抑えることで作物を病気のリスクから守る働きをしています。

絶滅の危機に瀕している独自の進化を遂げてきた種(EDGE)であるコウモリの絶滅は、私たち人間の生活に影響を及ぼすだけでなく、何百万年にもわたる貴重な進化の歴史を失うことも意味しています。

 

 

 

References:ZSL