イタチの仲間である「マツテン」は、北米から侵入した「トウブハイイロリス」の天敵であるため、イギリス国内で保護されています。
トウブハイイロリスは農作物や生態系に被害を与え、在来種である「キタリス」に致命的な病気をもたらす外来種として認識されています。
マツテンもキタリスを襲うことがありますが、この2種は数千年にわたって共生関係を築いてきており、トウブハイイロリスがやってくるまで、それぞれの個体数はバランスよく推移していました。
現在マツテンには、トウブハイイロリスの魔の手からキタリスを救うヒーローとしての役割が期待されています。
しかし新しい調査によると、マツテンはトウブハイイロリスの天敵ではなくなりつつあります。
マツテンとトウブハイイロリスはそもそも住む場所が異なる
北アイルランドのクイーンズ大学ベルファストが行った大規模な調査は、マツテンとトウブハイイロリス、そしてキタリスの関係性が時と共に変わりつつある実態を明らかにしています。
調査では北アイルランドの都市部と農村部、計332か所にカメラトラップを仕掛け、3種の動物の行動をモニタリングしました。
得られたデータは、それぞれの種が将来どのように分布していくのかを示す予測モデルに使われました。
シミュレーションの結果は、将来マツテンとトウブハイイロリスの生息域が交わらなくなることを示しました。
マツテンは森林のスペシャリストである一方、トウブハイイロリスは都市環境に適応しています。
マツテンの天敵としての能力は、都市化が進むにつれ、次第に発揮できなくなります。
トウブハイイロリス (Tim Dutton/Flickr)
Journal of Applied Ecologyに掲載された研究の著者であるジョシュア・トワイニング氏は、「マツテンはヨーロッパのどこにおいても都市部には住んでいないため、トウブハイイロリスを駆除する唯一の解決策になる可能性は低い」と述べ、「マツテンをサポートする措置を講じなければ、いずれキタリスは絶滅するかもしれない」と指摘しています。
キタリス (hedera.baltica/Flickr)
マツテンは以前の研究で、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドにおいて、トウブハイイロリスの天敵として機能していることが確認されています。
しかしシミュレーション結果は、将来マツテンの住む森林が減少し、それによってトウブハイイロリスの勢いがさらに増すと予測しています。
トワイニング氏は、マツテンのキタリスを救う能力は「個体数の継続的な回復」、「森林の被覆」、「都市部における避難所」の3つの条件に左右されると述べています。
都市部に生息するマツテンが、トウブハイイロリスの脅威になる保証はありません。
過去の研究では、被食者が捕食者との接触を繰り返すことで遺伝的に強くなる例が確認されています。
本来森林で生活しているマツテンを都市に住まわせた場合、トウブハイイロリスはマツテンに対する抵抗力を獲得する可能性があります。
研究者はマツテンとキタリスを守るには、自然の森林を増やし、都市部のトウブハイイロリスの数を制御する必要があると指摘しています。
外来種をピンポイントで駆除するのは至難の業……
マツテンが住める森林を増やしていきたいねー
Reference: The Guardian