オーストラリア北東部やニューギニア南部の狭い地域に生息するヒクイドリは、観光客や鳥を愛する人たちの行動により、命を落としています。
ダチョウやエミュー、そして絶滅した巨大な鳥モアなどの仲間であるヒクイドリは、年々数が減少しており、オーストラリアでは絶滅危惧種に指定されています。
野生での生息数は、1000羽未満であると推定されており、現在、政府やNPOなどによる積極的な保護が進められています。
ヒクイドリの死の原因は、道路での車との接触です。
これは観光客やツアーの増加と関係していますが、ヒクイドリの死体を剖検した獣医によると、問題は単純ではありません。
人間の与える餌を求めて道路に飛び出すヒクイドリ
世界遺産の森を抱えるクイーンズランド州の観光地キュランダには、地元の人々が「エルビス」と呼ぶヒクイドリがいます。
エルビスの子供たちは、過去18カ月の間に、5羽が車に轢かれて亡くなっており、この時の剖検は、ヒクイドリの専門家である獣医のグラハム・ラウリドセン氏が行いました。
剖検でラウリドセン氏は、胃の中から奇妙なものを発見します。
それは切れ目の入ったブドウやバナナでした。
ヒクイドリは雑食性で、主に果実を好んで食べます。
ブドウやバナナの切れ目は、これらが自然の木からとられたものではなく、人間によって与えられたものであることを示唆しています。
ラウリドセン氏は、「これが、鳥が死んだ理由の100%です」と説明し、ヒクイドリが車に轢かれるようになったのは、「本来いるべき茂みではなく、餌を求めて道路に顔を出しているからです」と述べています。
人間に餌をもらったヒクイドリは道路に出てきて事故に遭う (Francesco Veronesi/Flickr)
複数の剖検を行ったラウリドセン氏によると、事故で命を落としたヒクイドリの胃の中には、ほとんどの場合、切り刻まれた果物の断片がありました。
これらは自然の果物が消化したものではなく、明らかに人間の手によって切られ、与えられたものでした。
この地域ではヒクイドリを観察するツアーが行われており、旅行会社は客を得るために、いかに人間が鳥に近づけるかをアピールしています。
その後の調査では、事故のあった道路で、ヒクイドリに餌を与える人の姿が確認されています。
ラウリドセン氏は、「果物の断片は、ヒクイドリが誤って手に入れたものではありません。彼らが人に近づくのは、餌をもらえるからです」と述べています。
ヒクイドリは数が少なく保護が求められる動物です。
しかし人間との接触が増えたことで、皮肉にも自然環境から遠ざかり、命を落としています。
オーストラリアでは古くから、人間と野生動物の共存に関する議論があり、オオカミの一種であるディンゴや野良猫には、生息地の隔離や駆除などの対応がとられています。
ヒクイドリの事故が今後も増え続けた場合、政府は何らかの追加の対策に乗り出す可能性があります。
クイーンズランド州の当局によると、ヒクイドリに餌をやった場合、最大で5222ドルの罰金が科せられます。
観光客が来る地域のヒクイドリは車を見ても恐れないんだって
自然の生き物に餌を与えるのはよくないんだね
Reference: ABC News