世界の海で行われている違法な漁業は、毎年200~300億ドルの損害を世界経済に与えていると試算されています。
違法な操業を取り締まるには海は広すぎるため、各国の法執行機関は頭を悩ませています。
また多くの海域で行われている違法な延縄漁は、資源が回復するのを待たずに大量の魚を捕獲するため生態系に打撃を与えています。
海の資源を守ろうと様々な取り組みが行われているなか、フランスとニュージーランド、そしてイギリスの研究者は共同で、アホウドリを使った漁船の追跡システムを考案しています。
アホウドリは最大で3.3mの翼幅を誇る最大の鳥の一つで、広い海を80㎞の速度で飛び、一部の種に至っては陸に着陸せずに何年も海で過ごすことができます。
科学者は違法漁船を取り締まり世界の海の資源を守るために、アホウドリを“採用”しています。
監視の目から逃れる違法漁船を見つけるアホウドリ
米国科学アカデミー紀要に掲載された研究は、アホウドリ169羽にポータブルデバイスを取りつけ6カ月間にわたってその行動を追跡した結果、多くの違法な操業を行っている漁船を発見できたことを報告しています。
アホウドリには、衛星を利用して地球環境のデータを収集するアルゴスシステムとGPS、そしてレーダー探知の3つの機能を備えた装置が取りつけられました。
世界の海で操業する漁船には、AIS(Automatic Identification System)と呼ばれる船舶を識別するための装置がついており、レーダーによって船舶同士が衝突するのを避けたり海上の交通を取り締まる当局に位置を知らせたりできる仕組みになっています。
しかし違法な操業を行う漁船は、AISのシステムをオフにし監視の目から逃れます。
広い海で違法漁船を見つけるのは難しいことですが、アホウドリは漁船の網にかかった魚を見つけることができるため、船に近づいたときに得られたレーダー探知機のデータから、その漁船がAISを使用しているかどうかがわかります。
このデータが衛星を通じて当局に送られれば、違法な操業をする漁船の取り締まりに役立てることができます。
背中に装置を取り付けたアホウドリ (Courtesy of Alexandre Corbeau)
研究者は、「海洋を監視するための革新的な方法が緊急に必要だ」と述べたうえで、従来の違法な漁業を取り締まる方法が複雑で適切なものではないと指摘し、特にリアルタイムで船の位置を特定するのが困難であるとしています。
その点アホウドリは、網にかかった大量の魚を遠い位置から見つけ、船に警戒されずに近づくことができます。
研究者の一人で、フランス国立科学研究センターの海洋鳥類学者であるアンリ・ヴァイマースキルチ(Henri Weimerskirch)氏は、海で生活し鋭い観察眼を持つアホウドリのことを「海の監視者」と呼び、彼らを使った違法漁船のパトロールは、飛行機や衛星を使った高価でハイテクな方法よりも経済的に妥当な選択になり得ると話しています。
アホウドリは半年の間に2,000万平方マイル(約5,179万㎢)の海を調査しました。
鳥が船舶から4.8㎞離れた地点に到達すると、装着されたデバイスから衛星を介して当局に船のデータが送られ、そこで該当の船がAISを搭載しているのか、またはシステムをオンにしているのかなどが照合されます。
アホウドリが期間中に発見した353隻の漁船のうち28%はAISを使用していませんでした。
このうち公海で確認された漁船については、実にその37%がAISをオフにしていました。
AISの稼働率は排他的経済水域で操業する船ほど高く、国家の監視の目が届かない公海で操業する船ほど低くなりました。
またオーストラリア領のハード島周辺で発見された漁船の全てがAISをオンにしていたのに対し、南アフリカのプリンス・エドワード諸島周辺の漁船はAISをオフにしていたことから、研究者は、沿岸国が定期的に漁船の調査を行っているかどうかも違法な操業と関係があると指摘しています。
アホウドリの未来は人々の関心にかかっている
現在アホウドリ22種のうちの8種が絶滅の危機に瀕しています。
アホウドリの多くは、漁船の使う延縄に絡めとられることで命を落とします。
延縄漁は水面近くを泳ぐ魚を取るための漁法で、無数の針が仕掛けられた網が100㎞もの範囲に広がり、掛かった魚がアホウドリなどの海鳥を引き寄せます。
今回の研究で採用されたアホウドリのうち少なくとも2、3羽は延縄にかかって死んだものと推定されており、一部にはこの方法に対し批判的な見方もあります。
長年海鳥の行動を記録してきたヴァイマースキルチ氏は、ほとんどのアホウドリは数キロ先から漁船を監視しており、また今回の実験で使われた装置は鳥の飛翔行動に影響を与えず簡単に取り外しができるものだと説明しました。
そしてアホウドリを使った違法漁業の発見は、当局と国民にその実態を知らしめ行動を促すだけでなく、アホウドリの生活史やその保護に関する人々の知識を向上させることにもつながっていると話しています。
研究チームは、アホウドリが訪れない海域をカバーするために、今後他の海鳥を使った同様の実験を行う計画です。

この方法が使われるようになれば世界の海で違法な漁業がなくなるかもしれないね

漁業の実態だけじゃなくて鳥の生態もよくわかるようになるから、アホウドリの保護にも有益と言えるな

世界の海を守るアホウドリに期待だねー
References: Smithsonian Magazine,CNN