爬虫類の親は、哺乳類や鳥類の親ほど子供への愛情をもっていません。
親が関心を持つのは卵の間だけで、孵化した後のことは子供たちまかせです。
爬虫類の子供は卵から孵った途端に外界の危険にさらされますが、生き残るために親の力をあてにすることはできません。
一般的に、爬虫類の親子の間には特別な絆がないと考えられています。
しかしオーストラリアに生息するあるトカゲの親は、子供たちを守るため、ヘビに噛みつき、鳥を追い払います。
カニンガムイワトカゲ――爬虫類では珍しい社会性をもったトカゲ
オーストラリアの研究者は、ニューサウスウェールズ州の高山地域で、固有種である「カニンガムイワトカゲ (Cunningham’s skink)」を3年にわたって調査しています。
カニンガムイワトカゲは昼行性のトカゲで、昆虫、カタツムリ、ナメクジなどの無脊椎動物のほかに植物も食べ、また爬虫類では珍しくグループで生活する社会性をもっています。
繁殖形態は卵を胎内で孵化させる卵胎生で、生まれた子供は、時には数年間親と一緒に過ごします。
カニンガムイワトカゲの子供は長い間親と共に生活する (Credit: The Conversation )
調査は1月下旬から2月上旬にかけて行われ、3年間で多数のビデオ映像と赤外線画像が記録されました。
当初この調査の目的は、トカゲの種が気候変動にどう対処しているのかを知ることにありましたが、途中カニンガムイワトカゲが前例のない行動を見せたため、研究は、このトカゲの社会性と親子の絆を理解する方向へと向かいました。
研究者はカニンガムイワトカゲの家族を観察している最中、天敵である危険な蛇(イースタンブラウンスネーク)がやってくるのを発見し、急いでカメラを回しました。
通常の爬虫類の種であれば、小さな子供がヘビに食べられてしまうのは避けられない運命です。
しかしカニンガムイワトカゲの親は子供を守るため、果敢にもヘビに立ち向かいました。
調査期間中、カニンガムイワトカゲとヘビとの戦いは2度見られましたが、どちらも最終的にヘビが退却しています。
カニンガムイワトカゲの親はヘビの胴体に噛みつき、敵が根をあげるまで決して離そうとはしませんでした。
研究者は、カニンガムイワトカゲの親が、天敵の鳥であるカササギフエガラス(マグパイ)を追い払う様子も目撃しています。
期間中カササギフエガラスはトカゲの家族を12回襲いました。
しかし親はこのいずれにおいても、カササギフエガラスを積極的に追いかけ、退けることに成功しています。
Australian Journal of Zoologyに掲載された研究の著者の一人である、サンシャイン・コースト大学のグレゴリー・ワトソン博士は、「一部の動物は、同じ種であっても他の個体と交流することはなく、それは子孫であっても同じである」と述べ、爬虫類であるトカゲが子供を守るようなケースは、自然界ではめったに記録されないと説明しています。
またカニンガムイワトカゲの親がなぜ天敵に立ち向かっていったのかについて、「撃退は子供がいたなかで行われたが、自己防衛や縄張り意識などとも関連があるかもしれない」と述べ、今後さらにフィールドワークを続け、生態を明らかにしたいと付け加えています。
カニンガムイワトカゲの親は15メートル引きずられてもヘビに噛みついたままだったんだって!
食べられる危険もあるのに立ち向かうなんて、親は強し、だね~
References: The Conversation