3億年以上その姿を変えず生きた化石とも呼ばれる「カブトガニ」は、医療の発展において大きな役割を果たしてきました。
カブトガニの青い血液は、新しい薬が人間の体に無害であることを証明するために使用されます。
毎年何十万匹ものカブトガニが捕獲されては研究所に運ばれ、心臓近くの静脈から血液が抜き取られています。
製薬会社は血を回収し生きているうちに元の場所にリリースしていますが、その後のカブトガニがどうなったのかについてはほとんど関心が持たれていません。
アメリカでは毎年5万匹のカブトガニが採血中に命を落としています。
またリリースした個体が捕獲前の生活に戻れなくなったり、メスが交尾をしなくなるなどの影響も確認されています。
近年数を減らしつつあるカブトガニは、海面上昇による生息地の喪失という問題も抱えています。
カブトガニの血液を使わないテスト方法
カブトガニの扱いに関しては自然保護団体や動物愛護団体などが懸念を表明しています。
そうした動きを受け製薬会社は、カブトガニの血液の成分に似せた代替物をつくり新薬のテストを行ってきました。
しかし医療基準を定めている米国薬局方(USP)は5月、カブトガニの血とまったく同じではないとして、合成代替物「rFC」の単独での使用を認めない新しいガイドラインを発表しました。
rFCはヨーロッパでは既に利用されていますが、アメリカでは製薬会社のイーライリリー・アンド・カンパニーだけが、ごく最近になって使い始めました。
同社は2016年に新薬の安全性テストの90%をrFCに切り替え、他の製薬会社も追随するようリーダーシップを発揮してきました。
今回のUSPの決定は、アメリカのカブトガニの苦痛の日々が引き伸ばされることを意味します。
(Greg Thompson/USFWS/Flickr)
大西洋諸国海洋漁業委員会(ASMFC)の報告によると、2018年にアメリカ国内で血を抜かれたカブトガニの数は約50万匹で、それらのうちの数千匹はリリースの過程で死亡しています。
保全グループは、rFCへの切り替えにより毎年10万匹のカブトガニが救われると試算していました。
ニュージャージー州の自然保護団体の責任者であるバーバラ・ブルマー博士は、「血液の回収がカニの生活に与える影響を、実際には誰も知らない」と述べ、製薬会社はカブトガニを使わない方法に目を向けるべきだと指摘しました。
そして「カブトガニは生態系にとって重要な一部分であり、個体数が心配だ」と懸念を示し、「人間は、彼らの力を借りることから離れる必要がある」と話しています。
カブトガニの血液を使った新薬のテストは、既に30年以上の実績があります。
製薬会社のイーライリリー・アンド・カンパニーは、カブトガニの生態を守るためにも、業界がrFCを使用するべきだと考えており、これまでに4万件を超えるサンプルをテストしその安全性を確認してきました。
同社の生物学者であるジェイ・ボールデン氏は今回のUSPの決定に対し、「データはそこにあるが、見られていないか無視されている」と述べ、「これ以上のデータをUSPが要求する理由はない」と付け加えています。

アメリカだけで毎年50万匹も血を抜かれてるなんてヒドイよー!

早くrFCが使えるようになってほしいね
References: BBC,Reuters,Smithsonian Magazine