絶滅したと考えられていたネズミが、およそ50年ぶりにアフリカのジブチで見つかりました。
絶滅の危機にある野生生物を救う活動をしている「Global Wildlife Conservation (GWC)」のプロジェクトによって発見されたのは、大きな目と長く伸びたゾウのような鼻をもつ小型哺乳類「ハネジネズミ (elephant shrew)」の一種です。
ハネジネズミはアフリカに20種が存在していますがそのどれもがよくわかっておらず、今回見つかったハネジネズミも、最後の記録は1968年のものです。
GWCは世界の25の種を「失われつつある」と認定し、それらを救う活動を行っています。
今回発見された「ソマリハネジネズミ」は、その中でも最重要動物の一つでした。
(GWCは2019年にもベトナムの固有種であるマメジカを30年ぶりに発見しています)
50年ぶりに生きた姿が確認されたソマリハネジネズミ
GWC、デューク大学、ニューヨーク州立大学、ジブチの科学者などで構成されたチームは、2019年に目撃情報があったジブチに入り、ソマリハネジネズミの生態調査を行いました。
地元ではたびたびハネジネズミが目撃されており、また調査に協力したジブチ自然協会のホセイン・ラヤレ氏も、以前にソマリハネジネズミを見た経験がありました。
チームは彼らの知識を元にハネジネズミをおびき寄せるワナを作りました。
ワナはピーナッツバター、オートミール、イーストを混ぜ込んだ餌を取りつけたもので、1000個以上が国内の12の地域に仕掛けられました。
ゾウのような鼻をもつソマリハネジネズミ (Credit: Houssein Rayaleh)
ソマリハネジネズミの尾には他のハネジネズミとは違い、小さな毛の房があります。
チームにとって幸運だったのは、最初のワナにかかったネズミがこの特徴を持っていたことです。
これによって他のネズミとの比較が容易になり、最終的に、ワナにかかった動物の中から12匹のソマリハネジネズミが特定されました。
調査チームの一員である米国デューク大学のスティーブン・ヘリテージ氏は、発見を「驚くべきものだった」と振り返り、「ワナにかかった動物の尻尾に毛の房が見えたとき、私たちは顔を見合わせるだけで全く信じることができなかった」と話しています。
12匹のソマリハネジネズミは、今回初めて、生きた状態で写真やビデオにおさめられました。
その後のDNA分析で、ソマリハネジネズミは、遠く離れたモロッコや南アフリカなどの種と近縁であることがわかりました。
また今回発見された場所が、ネズミの生存にとってそれほど脅威ではないこともわかりました。
長い期間を経たのちに再発見される動物は、ほとんどの場合、絶滅の瀬戸際にいます。
しかしソマリハネジネズミは50年の間、人間や敵対する動物を巧みに避け繁栄を続けてきました。
現在研究者は、ソマリハネジネズミが絶滅する可能性は低いと考えています。
国際自然保護連合(IUCN)のハネジネズミの専門グループの議長アンドリュー・テイラー氏は、「チームは50年ぶりにソマリハネジネズミの存続を正式に文書化しただけでなく、種についての私たちの理解も訂正した」と述べ、「この発見は、ジブチの偉大な生物多様性を浮き彫りにし、新しい科学と研究の機会をもたらすものだ」と強調しています。
研究チームは今後、ソマリハネジネズミにGPSを取りつけて、移動や生態についての調査を行う予定です。
研究結果はPeerJに掲載されました。
ソマリハネジネズミはツチブタやゾウ、マナティなんかの遠い親戚なんだって!
あの鼻の長さはゾウと関係があったのか……
References:BBC,The Guardian