地球上で最も暑い場所の一つであるイランのルート砂漠で、新種の淡水甲殻類が発見されています。
ルート砂漠はスイスよりも大きな面積をもつ広大な乾燥地帯で、太陽の熱を吸収する黒い岩石が多く、日中の温度は人間が住めないレベルにまで達します。
2006年のNASAによる調査では70.7℃が記録されました。
平均気温は冬のマイナス2.6℃から夏の50.4℃までの範囲で、年間降水量が30mmを超えることはありません。
この暑さのため、ルート砂漠には池などの恒久的な水源はなく、わずかに降る雨と、周辺の川の氾濫によってできる一時的な水たまりだけが生き物の生命線となっています。
雨が降るまで何十年でも生き延びる「Phallocryptus fahimii」
体長数ミリの新種の淡水甲殻類は、オーストリア、ドイツ、イランの研究者がルート砂漠を探検している最中に発見されました。
研究は、砂漠の生態や生物多様性、地形などを深く理解するために行われました。
新たな種は、他の乾燥地域で4種のみが確認されている「Phallocryptus属」の仲間とみられ、2017年の遠征に参加し2018年に事故で亡くなったイランの生物学者Hadi Fahimi氏の名前をとって、「Phallocryptus fahimii」と命名されました。
砂漠南部にできた季節限定の小さな湖で発見されたPhallocryptus fahimiiは、研究者自身にとっても衝撃でした。
研究に参加したシュトゥットガルト州立自然史博物館のホセイン・ラジャーイー博士は、「ルート砂漠のような極端な環境にある水には常に注意を向けるようにしているが、この暑く乾燥した場所で甲殻類が見つかったのは、本当にセンセーショナルな出来事だった」と振り返っています。
Phallocryptus fahimiiが発見された季節限定の湖 (Credit: Taylor & Francis Online)
Phallocryptus fahimiiは、形態と遺伝子の調査から、乾いた地層の中で何十年も生きられることがわかっています。
オーストラリアの砂漠に生息する同様の甲殻類を研究してきたウィーン自然史博物館のマーティン・シュウェントナー博士は、「これらの甲殻類は、乾燥した堆積物の中で何十年も生きることができ、水場が回復する次の雨季に孵化する」と説明し、「ルート砂漠という過酷な環境でさえ生き延びる能力は、彼らの回復力の高さを示している」と付け加えています。
調査結果はZoology in the Middle Eastに掲載されました。

ルート砂漠の最高気温の記録は80.3℃なんだって

そんなに暑くても生きられるなんてすごいね~
Reference: EurekAlert