ディンゴは生態系保護のカギになるか、オーストラリアを悩ます野良猫問題に新たな対応策

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Image by Jacqueline Wales from Pixabay

オーストラリアは野生の猫(野良猫)に困っています。

現在国内には2,000万から3,000万の野生の猫が生息しているとされ、それらが固有種を襲うことで多くの動物が絶滅の危機に瀕しています。

政府は野生の猫を減らすための対策を立てていますが、猫の繁殖はそれ以上に速いため、オーストラリアの固有種が姿を消すのはもはや時間の問題となっています。

調査によると野生の猫は国土の99.8%に存在していて、1年間に10億匹以上の絶滅危惧種を含む動物を食べています。

また野生の猫は在来種の数を脅かすだけではなく、トキソプラズマ症などの感染症を媒介します。

 

現在野生の猫を排除するために取られている方法には様々なものがあります。

ニューヨークタイムズ紙が以前報告したところによると、地元のハンターたちは野生の猫を狩るために毒の入った餌や致命的な罠を使用しています。

また最近では猫を狩るために「ディンゴ」にも期待が寄せられています。

ディンゴは数千年前にオーストラリア大陸にやってきたタイリクオオカミの一種ですが、野生の猫と同じように固有種の絶滅に関わり、また家畜を襲うことなどからあまりよく思われていない動物です。

一部の地域ではディンゴの侵入を防ぐための「ディンゴフェンス」が設置されています。

 

以前研究者たちは、ディンゴフェンスの内側と外側での野生の猫の生息数に関する調査を行っています。

その結果、ディンゴが生息するエリアの中では野生の猫の数が減っている証拠が得られました。

このことからディンゴを野良猫の駆除に利用しようという考えが議論され始めています。

しかし最新の研究によると、ディンゴは野良猫に対する最終兵器にはなりません。

 

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野生の猫はディンゴを敵とはみなしていない――おそらくその逆も同じ

 

photo by cafuego on Flickr

 

オーストラリアのクイーンズランド州にある害獣研究センターの主任科学者マット・ジェントル博士らを中心に行われた研究は、ディンゴが野生の猫の駆除に役立っていないことを明らかにしています。

過去のいくつかの研究では、ディンゴがいる地域の野良猫の数は時間と共に減っているという結果になっています。

しかしディンゴと猫の数の観測は限られた方法――地面についた足跡やライブカメラからの映像――に頼っており、より正確な生息の推移を調べる必要がありました。

ディンゴを猫の駆除のために放ったとしても効果がないのであれば、彼らの元々の特性である捕食者としての性格が、むしろオーストラリアの固有種の生存を脅かすことにつながってしまいます。

ジェントル博士たちのチームはクイーンズランド中央部を対象に、ディンゴと野良猫の関係についてもう一度念入りに調査することにしました。

その結果、ディンゴと野生の猫は地域の広範囲にわたって“共存”していることがわかり、ディンゴが野良猫駆除のための効果的な手段とはならないことが示されました。

 

調査は野生の猫をディンゴの活動範囲の中でカウントする形で行われました。

しかしどのエリアにおいてもディンゴがいる場所には猫が生息しており、ある地域の猫たちはディンゴが生息していない地域の猫たちよりも活発なことさえありました。

これはディンゴが野良猫の駆除に何ら役立っていないことを意味しています。

観測したエリアの野生の猫はディンゴの有無にかかわらず非常に活動的で、狩りだけでなく繁殖においてもディンゴからの脅威を感じているようには見受けられませんでした。

 

ジェントル博士は、分類学者が最近になって、ディンゴがオオカミではなく犬の仲間であると判断し始めたことに触れ、猫たちの犬と共存する能力が観測結果として表れていると指摘します。

 

猫は何万年も犬の周りで生きてきました。調査結果は、オーストラリアの野生の猫が本質的に飼い猫と同じであることを示唆しています。

 

博士は野生の猫がディンゴのいる地域でも活発だったのは、猫が環境に適応しディンゴと共存する能力を示した結果だと考えています。

猫も犬も長い間人間と一緒に暮らし、また共存してきた動物です。

一部の家庭では犬も猫も同時に飼っている場合があります。

彼らは――最初のうちは仲違いするかもしれませんが――共存するための能力を十分に発揮し同じ屋根の下で暮らしていくことができます。

分類学者が指摘するように、ディンゴがオオカミではなく犬の一種であるならば、野生の猫にとってディンゴは、敵などではなく仲間のようなものです。

 

乱れた生態系を元に戻すのは簡単ではない

 

ディンゴが野良猫の駆除に役立つかもしれないという意見は、アメリカのイエローストーン国立公園の例が影響しています。

イエローストーン国立公園は、1926年に最後の野生のオオカミが殺されて以降食物連鎖が崩れ、生態系が破壊されてしまいました。

その後30年近い議論を経てオオカミの再導入が決定され、結果、現在では生物多様性が戻り始めています。

イエローストーンのオオカミの再導入は、一度崩れた生態系を元に戻す好例として挙げられますが、オーストラリアのディンゴはオオカミではありません。

またもしディンゴがオオカミのような性質を持っていて野生の猫を駆除できたとしても、それが固有種の保護に結び付くとは限りません。

そもそもディンゴはフクロオオカミなどの固有種の絶滅に関わり家畜を脅かしてきた捕食者です。

野生の猫をどうにかできたとしても、今度は増えたディンゴを駆除しなければならなくなるでしょう。

 

ジェントル博士は、現在のオーストラリアが固有種の絶滅を回避するための闘いに負けつつあると述べ、罠やハンティングは狭い範囲での猫の駆除には役立つものの、絶滅危惧種を保護するためにはさらなるアプローチが必要であると強調しています。

 

 

 


 

乱れた生態系はなかなか元には戻りません。

過去にも世界の様々な地域で、元々その場所には存在していなかった種が人間によって持ち込まれたことで生態系が破壊されてきました。

オーストラリアを悩ませている野良猫たちも、元々は18世紀の開拓者によって持ち込まれています。

オーストラリアの野生の猫の問題は、人間の身勝手な動物の移動が、いかに長い間生態系に影響を及ぼすのかを示しています。

 


 

 

かなで
かなで

猫もディンゴも固有種もみんなが助かる方法があればいいのにー

しぐれ
しぐれ

生態系を元に戻すのは大変なことなんだね

 

 

 

References:The Conversation

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