夜間に飛行する鳥の群れは、行き先やお互いの位置を「フライトコール」と呼ばれる会話によって共有しています。
フライトコールは暗い夜であっても、鳥たちを迷うことなく目的地へと導くことができます。
しかし近年、フライトコールが機能しなくなる事態が起きています。
鳥たちは夜間の人工的な光によって混乱し、建物に衝突しています。
夜間の人工的な光は鳥の情報伝達能力を狂わせる
米国ミシガン大学の進化生物学の助教授であるベンジャミン・ウインガー氏は、夜間に移動する渡り鳥の衝突死について研究しています。
渡り鳥がビルなどの高い建物にぶつかって命を落とす事故はかなり前から記録されており、シカゴでは1978年から、鳥類学者による継続的な調査が行われています。
特に北米最大のコンベンションセンターであるマコーミックプレイスでは多くの衝突が起きており、これまでに93の鳥の種の、7万件以上の事故のデータが蓄積されています。
マコーミックプレイスはシカゴを代表する建物の一つで、夜間でも煌々と明かりが灯っています。
ウインガー氏は以前の研究結果から、鳥の衝突死は人工的な光が原因だと考えています。
過去の研究では、人工的な光が鳥の羽ばたきに影響を与えることが明らかになっています。
羽ばたく回数は飛行する場所によって大きく異なり、都市部の上空を飛ぶ鳥は農村部の上空を飛ぶ鳥よりも3倍以上羽を動かします。
これは人工的な光が、鳥たちを一種のパニック状態に陥れていることを示唆しています。
(Image credit: Roger Hart/University of Michigan Photography)
こうしたデータを元にウインガー氏は、シカゴ上空を通過する代表的な渡り鳥の飛行ルートを調べ、そこにある建物と人工的な光の数を記録していきました。
またマコーミックセンターにも働きかけ、夜間の照明量を減らしてもらい、鳥の衝突に変化が起こるかどうかも記録しました。
その結果、鳥の衝突事故の件数は、夜間の人工的な光がある地域ほど増加する傾向にあることがわかりました。
マコーミックセンターでの実験では、人工的な光を減らした場合、衝突死の数は75%も減少しました。
夜間の人工的な光は、何らかの形で鳥たちの行動に影響を与えています。
しかし全ての鳥の種が、フライトコールを使って群れと情報を共有しているわけではありません。
ウインガー氏の調査では、フライトコールを使わない鳥は、人工的な光からほとんど影響を受けないことがわかっています。
フライトコールを使わない鳥も建物に衝突することはありますが、その数はフライトコールを使う鳥には遠く及びません。
マコーミックセンターで最も多く回収された渡り鳥は、スズメ、ウグイス、ツグミで、これらの種は全てフライトコールを使って仲間とやりとりをします。
フライトコールは群れ全体を正しい飛行ルートに導く役割があります。
群れの後方にいる鳥は、先を行く鳥から情報を受け取り進路を決定しています。
これはたった一羽が受けた光の影響が、群れ全体にも及ぶことを意味します。
ウインガー氏は、都市部と農村部での羽ばたき回数の差や、フライトコールを使う多くの種が被害に遭っているという証拠から、「人工的な光は鳥たちの行動に影響を与える」と結論づけています。
夜は暗いのが自然だから光があると混乱しちゃうんだよ
都会の夜は明るすぎる……
Reference: MichiganNews