オーストラリアに生息しているバンディクートの一種「ヒガシシマバンディクート(eastern barred bandicoot)」は、地中に住むワームなどの虫を探すため毎晩大量の穴を掘ります。
餌を得ることができなかったバンディクートは次の穴を掘りますが、残された穴は別の生き物にとって素晴らしい住処になります。
またバンディクートの穴掘りは、土壌の健康改善にも役立ちます。
土が掘り返されることで、水分と栄養分が増加するだけでなく、土壌が圧縮されるのも防ぎ、それは植物の種子の発芽を促します。
現在オーストラリアに29種類いる“穴を掘る”動物は、ヒガシシマバンディクートを含めそのほとんどが絶滅の危機に瀕しています。
一年で象の体重と同じ量の土を掘り返すヒガシシマバンディクート
ヒガシシマバンディクートが掘った穴 Credit: Amy Coetsee/University of Melbourne
オーストラリアのディーキン大学とメルボルン大学の研究者グループは、ヒガシシマバンディクートをビクトリア州にあるチャーチル島に解き放ち、その生態を観察しています。
バンディクートのような穴掘り名人の不在は、土地の健康や生態系に打撃を与えます。
研究者はヒガシシマバンディクートが掘る穴の数を数えることで、彼らの重要性を多くの人に理解してもらおうと考えました。
キツネやネコなどの天敵がいないチャーチル島に解き放たれた20匹のヒガシシマバンディクートは、最初の晩からすぐに得意技を披露しました。
1匹のバンディクートは1時間で41個の穴を掘り、その数は一晩で約500個に及びました。
調査では掘り返された土の重さも量りました。
その結果、1匹のヒガシシマバンディクートが一晩で掘り返す土の量は、約13キログラムになることがわかりました。
この量は年間に換算するとおよそ4.8トン、すなわちオスのアフリカ象の体重と同じくらいです。
ヒガシシマバンディクートの平均体重が750グラムであることからすると、これは驚異的な量といえます。
ヒガシシマバンディクートの穴掘りは土地の健康と生態系にとって重要
バンディクートの穴掘りは土壌の健康を改善するだけでなく、植物や動物の生態にも大きな影響を与えます。
バンディクートが掘った穴はクモや甲虫などの住処になるだけでなく、土の循環によって栄養が行き渡るため、植物にとっても育ちやすい環境になります。
さらに過去の調査では、穴掘りによって乾燥した葉などの植物が土の中に戻ることで、火災の発生率が低下し、仮に火災が起きても炎が小さくなることがわかっています。
研究者はチャーチル島で行われた全ての穴掘りの観察結果から、ヒガシシマバンディクートの存在は、この島の土壌の改善に役立ち、生態系の健康と再生に重要な役割を果たすと結論づけています。
また穴掘りは、牧草の成長を助け土の流出を減らし、家畜の踏み付けによる土壌の圧縮を防ぐことで農業にも貢献できると付け加えています。
研究は土が湿りやすい雨季に行われたため、乾燥した時期においては結果が変わる可能性もあります。
土が乾燥すると掘るのが困難になります。
バンディクートは賢いため乾燥した時期には穴を掘らずに、甲虫やコオロギなどの地上にいる餌を食べます。
それでも、年間で象一頭分の土を掘り返すことのできるバンディクートが、オーストラリアの土地と生態系になくてはならない動物であることに変わりはありません。
2017年の調査だとチャーチル島のヒガシシマバンディクートの数は130匹だから、一晩で1,690キロの土が掘り返されるんだよ!すごいねー!
土木業界が目をつけるのも時間の問題……
References: The Conversation