好物のエビのためなら我慢!イカの自制心は貧相な食事をやり過ごすことができる

動物
Image by manseok Kim from Pixabay

英国ケンブリッジ大学の研究者は、夕方に好みの餌をもらえるとわかったイカが、日中の食事の量を減らす行動をとることを発見しています。

ヨーロッパに多く生息しているコウイカ類「ヨーロッパコウイカ」を対象に行われた実験は、イカが将来の報酬のために今ある利益を手放せることを明らかにしました。

 

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イカは出来事を記憶し状況に応じて自制心を発揮できる

 

ケンブリッジ大学心理学部の博士課程の学生、ポーリーン・ビヤール(Pauline Billard)氏たちの研究チームは、イカがどんな餌を好むのかを調べるため、29匹のヨーロッパコウイカにカニとエビを1日に5回与え、それを5日間繰り返しました。

カニとエビはイカから同じ距離に置かれていましたが、実験中の全てのイカは、エビを食べることを選択しました。

イカの好物がエビであるとわかった研究者は次に、夕方の食事としてエビを必ずもらえるグループと、ランダムにエビをもらえるグループとに分け、それがイカの日中の採餌行動にどのような影響を与えるのかを観察しました。

その結果、夕方に必ずエビをもらえるとわかったイカのグループは、すぐにパターンを記憶し、昼間の食事であるカニを必要以上には食べませんでした。

一方でエビをランダムに与えられたグループは、将来を予測できないため、昼の間にできるだけ多くのカニを食べる選択をしました。

 

Credit: Pauline Billard

 

またイカは、属するグループがチェンジされた場合にもすぐに適応しました。

確実にエビをもらえていたイカは、ランダムな環境に置かれるとカニを多く食べるようになり、ランダムにエビを与えられていたイカは、昼間のカニをあまり食べなくなりました。

ビヤール氏は「イカはエビをもらえるかどうかをほんの数日で学んだ」と述べ、この行動を可能にしているのは、彼らの持つ洗練された脳のおかげであると指摘しました。

 

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将来の利益のために今あるものを手放す「自制心」は、過去の多くの研究で、鳥類や脊椎動物にも備わっていることがわかっています。

しかしイカは頭足類に属する動物で、人間や脊椎動物とは異なる進化を辿ってきました。

研究者の一人であるケンブリッジ大学の心理学教授二コラ・クレイトン(Nicola Clayton)氏は、イカの柔軟な採餌行動は、過去の経験を使用して環境の変化に迅速に適応した結果だとし、「頭足類が5億5,000万年前に脊椎動物の系譜から分岐したことを考えると、この発見は、認知能力の起源に対する貴重な洞察につながるかもしれない」と話しています。

 

 

 


 

イカたちは全て研究室の環境で育てられたため、この行動が野生のイカにも見られるのかどうかについてはさらなる研究を待つ必要があります。

研究者はイカの自制心と環境への適応力を明らかにした今回の結果が、将来の頭足類の研究に役立つことを望んでいます。

 

研究結果は科学誌Biology Lettersに掲載されました。

 


 

 

かなで
かなで

イカはあんまりカニが好きじゃないんだねー

しぐれ
しぐれ

それでもエビが食べられるかわからないときには、カニをしっかりと食べるんだから、すごい適応力だよね~

 

References: EurekAlert