世界にはまだまだ知られていない種が存在しています。
そしてそれらが見つかる場所は必ずしも自然の中だけとは限りません。
科学誌Ecology and Evolutionに掲載された研究によると、ロンドン自然史博物館に長年展示されていたオオサンショウウオの標本は、これまでに確認されていなかった新種の可能性があります。
「チュウゴクオオサンショウウオ」として知られていた個体は、1920年代にロンドン動物園で飼育された後ロンドン自然史博物館に移され、その後74年間展示されていましたが、誰もそれが知られていない新種であることに気づきませんでした。
研究はこの標本がチュウゴクオオサンショウウオとは異なるもので、中国南部に特有の新しい種であり、体長2m近くの大きさに達する世界最大の両生類の可能性があるとしています。
チュウゴクオオサンショウウオは現在絶滅危惧種に指定されています。
中国本土では農業の発達による生息地の縮小や、薬効があるとして乱獲されたことなどが原因でその生息数を減らし続けています。
研究者たちは今回の「ミナミチュウゴクオオサンショウウオ」の発見によって、この種の多様性に理解が生まれ保全活動に結びつくことを願っています。
新しい種「ミナミチュウゴクオオサンショウウオ」
野生のチュウゴクオオサンショウウオ Image Credit:Ben Tapley
新しい研究はチュウゴクオオサンショウウオが単一の種ではなく、進化の過程で3つに枝分かれしたことを発見しました。
3つの種は現在知られているチュウゴクオオサンショウウオの他に、自然史博物館に展示されていた新種である「ミナミチュウゴクオオサンショウウオ」、そして組織サンプルのみでまだ名前が付けられていない3つ目の種です。
これらの種は中国の異なる河川システムまたは山脈に固有であり、遺伝的にも同じものではないことがわかっています。
主任研究者であるロンドン動物学会のサミュエル・ターベイ氏は、3つのサンショウウオは310万年前から240万年前の間に遺伝的に分岐したと述べています。
この時期はチベット高原が急速に隆起した山岳形成期にあたることから、ターベイ氏は、劇的な地形の変化がサンショウウオの個体群を分離させ異なる種の進化に導いたのではないかと推測しています。
チュウゴクオオサンショウウオはかつて中国の中部、東部、南部の広い地域で生息していました。
しかし現在は絶滅危惧種に指定されるほど数が減っており、野生においては中国の指定された97か所のうち4か所でしか確認されていません。
ターベイ氏は現在のオオサンショウウオの保全計画について、「これらの動物の移動は病気の伝染や遺伝的交雑のリスクを招く」として全面的に更新される必要があると語っています。
チュウゴクオオサンショウウオの姿が見られます。 Giants on the Edge
中国ではオオサンショウウオは高級食材としても利用されていてその需要のために乱獲されています。
また繁殖のために生息地を移動した際に他の種との交雑がなされたことで遺伝的多様性を保持できなくなりつつあります。
博物館から新種が発見された今回のケースは、自然の状態における種の保全について考え直すきっかけを与えてくれています。