海岸沿いに住むイエネコのせい?ラッコの死の原因に新たな説

獲物をお腹で必死に割る姿がキュートな動物ラッコはかつて絶滅の危機に瀕していました。

その原因は狩猟や生息域の縮小、気候変動などいくつかが挙げられますが、最新の研究によるとここに新たな原因が加わることになりそうです。

現在でもラッコの生息数はレッドリストを外れるほどには回復していません。

この新たな脅威はラッコたちを再び絶滅の危機へと向かわせる可能性があります。

 

彼らにとっての新たな脅威――敵――は私たちの身近にいる愛玩動物、猫でした。

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イエネコは多くの野生生物の死の原因の一つ

 

Photo byAndrey/Flickr

 

The Royal Societyに掲載された研究は海岸沿いに住むイエネコがラッコにとっての新たな脅威であることを明らかにしています。

 

猫は人類にとって犬と並ぶ最もなじみの深いペットですが、一方で彼らの奔放さは野生の動物にとって時に致命的となることがあります。

ある研究によれば、アメリカだけでも猫によって毎年13~40億羽もの鳥たちが殺されています。

これはほとんどが野良猫によるものですが、家と外を自由に行き来できる飼われている猫(イエネコ)も鳥の減少に関わっていると考えられています。

またオーストラリアやニュージーランドでは、野生の猫たちが固有種を減少させる原因だとして積極的な駆除が行われています。

 

 

猫による被害は直接的なものに限りません。

猫はトキソプラズマ症という感染症の媒介者であり、彼らの糞は野生生物の生命を脅かすことがあります。

トキソプラズマは猫の体内でしか繁殖できず、猫はその生涯において数十億もの感染性オーシスト(原虫が含まれたサナギのようなもの)を排出します。

そしてオーシストは陸上生物だけでなく、川や海に流れ込むことによって水生生物にも被害を及ぼします。

実は研究者たちは古くから、ラッコの死因の一つにトキソプラズマへの感染があることを指摘していました。

この考え方は猫を愛する多くの人にとって印象が悪いものであり、またそれぞれの生活圏が異なることもあってなかなか認められにくい主張でした。

しかし今回新たに行われた研究は、ラッコに感染した寄生虫と近くの海岸に住むイエネコの持つ寄生虫との間に強い遺伝的関係があることを突き止めました。

 

カリフォルニア大学デービス校の獣医病理学者で研究著者のカレン・シャピロ氏は「これはラッコを殺す寄生虫がイエネコから来ているという究極の証拠です」と語っています。

 

開発された海岸はトキソプラズマを海へと流出させる

 

Image by skeeze fromPixabay

 

シャピロ氏たちは1998年から2015年の間に死亡したトキソプラズマに感染した135匹のラッコのDNAを調べました。

このうちのほとんどは脳に損傷が見られず(トキソプラズマ症は脳を冒し神経系に悪影響を及ぼしますが全てが死に至るわけではありません)、このことから寄生虫が死亡原因でなかったことが判明します。

しかし12匹のラッコについてはトキソプラズマが原因で死亡したことがわかり、それは「X型」として知られる特定の株に感染していました。(X型の株は一般的なⅡ型と呼ばれる株よりも危険だとされています)

そしてこのラッコから検出されたX型の株は、海岸に住む野良猫やボブキャットから採取されたトキソプラズマの型と一致していました。

これは、何らかの方法によってトキソプラズマを含む猫の糞が海に流出していることを示しています。

 

研究が行われたカリフォルニア沿岸はイエネコの数が野良猫よりも多く、沿岸は開発によって整備されています。

研究者は病原体を含む糞が、例えばコンクリートによって覆われた表面にあることで海に流出する可能性を指摘し、開発が進んだ場所ほどラッコはトキソプラズマから大きな影響を受けると結論づけています。

 

ラッコはトキソプラズマだけでなく、人間による捕獲や沖合の油田採掘、気候変動などといった様々な要因によって生存の危機にさらされています。

彼らを守るために、特に猫の飼い主ができることは何でしょうか。

 

一つは望まぬ繁殖を防ぐため、避妊、もしくは去勢手術を施すことです。

そしてもう一つは猫を屋外に出さないことです。

これはラッコだけでなく他の野生生物が猫によって殺されるのを防ぐことにもつながります。

またどうしても猫を屋外に出す場合には飼い主が糞についてしっかりと管理をし、またリードを使って訓練することも一つの選択肢になります。

 

 

 


 

日本の場合は海岸にラッコが生息していないので、あまり神経質になることはないかもしれません。

しかしトキソプラズマ症は人間も感染する恐ろしい病気です。

愛するペットと共に末永く過ごしていくためには、トキソプラズマについて知り、猫が人や野生動物に及ぼす影響について学ぶことが肝心です。

 

 

 

 

References:mnn

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