タスマニアデビルを研究しているグループは、この種に特有の致命的な病気「DFTD」について、感染力が弱まりつつあるという分析結果を発表しています。
DFTD(デビル顔面腫瘍性疾患)は咬傷によって広がる悪性のがんで、1996年に症例が報告されて以降、タスマニアデビルの80%以上が命を落としました。
病気のメカニズムや治療法は特定されておらず、タスマニアデビルの絶滅は近いと考える専門家も少なくありません。
新しい研究は、種としてのタスマニアデビルがDFTDを克服した可能性を示すものです。
DFTDの実効再生産数は3.5から1に
アメリカやオーストラリアなどの研究チームは、DFTDの現在の影響力を調べるため、20年以上にわたって収集されてきた腫瘍サンプルを分析しています。
分析は、ヒトの感染症やウイルスの進化を予測する手法を用いて行われ、11,000を超える遺伝子がスクリーニングされました。
これによりDFTDの変化に関わる28の遺伝子が特定され、時間の経過とともに病気がどのように広がっていったのかを追跡できるようになりました。
分析の結果、DFTDの現在の感染力は、1996年当時と比べはるかに低下していることがわかりました。
1匹のタスマニアデビルが何匹を感染させるかを示す実効再生産数は、DFTDが発見された1996年直後には約3.5であったのに対し、現在はほぼ1になっていました。
これは、たとえ1匹がDFTDに感染したとしても、他の個体には広がりにくいことを示しています。
研究を主導したワシントン州立大学のアンドリュー・ストーファー氏は、「この結果は、タスマニアデビルの継続的な生存に対する楽観的な朗報である」と述べ、「当面は個体数が少ない状態が続くが、絶滅の可能性は非常に低い」と説明しています。
実効再生産数の推移は、タスマニアデビルが短期間のうちに、DFTDに対する免疫を獲得した可能性を示唆しています。
Scienceに掲載された研究の著者の一人であるタスマニア大学のロドリゴ・ハメデ氏は、タスマニアデビルの適応力の高さについて、「こうしたことは4、5世代では起こらず、通常ははるかに時間がかかる」と述べ、「新しい研究は、病気の流行がしばらく前にピークに達したという証拠を示している」と付け加えています。
現在野生のタスマニアデビルの個体数は、2万程度と推定されています。
DFTDは、タスマニアデビルにとって依然致命的な病気であり、仮に免疫を獲得していたとしても楽観できる状況にはありません。
タスマニアデビルは保護活動が積極的に進められている動物で、最近では、かつて生息していたオーストラリア大陸への再導入も行われました。
しかし野生環境で育った個体と保護された個体とでは、病気への抵抗力が異なる可能性があります。
研究者は、「タスマニアデビルを保護するプログラムが、場合によっては病気を広める原因になり得る」と指摘し、飼育下の個体を野に放つことに対し疑問を投げかけています。
ストーファー氏は、「積極的な管理は必要ないかもしれず、実際には有害な可能性もある」と述べています。
被害が広がらないのは個体数が減ってるのも関係してそうだね
免疫ができてればいいけど、まだまだ安心はできないね
Reference: The Guardian