気候変動は魚、両生類、爬虫類など、自分の力で体温調節できない生き物の寿命を短くします。
現在、温暖化により生き物たちの生息地が狭められています。
野生生物は人間のように生活場所を変えられないため、上昇し続ける温度に対抗することができません。
異常な熱はストレスとなり、これらの生き物に脅威をもたらします。
温暖化による気温の上昇は変温動物の成長と寿命を狂わせる
イギリスとスペインの研究者チームは、周囲の温度によって体温が変化する変温動物が、気候変動からどのような影響を受けているのかについて調査しています。
チームは、気候変動と野生生物に関する過去の研究を集め、それらを現在の自然の状態と照らし合わせました。
その結果、変温動物の成長速度や寿命が、温暖化によって変化し始めていることがわかりました。
頻繁に発生する熱波やそれに伴う高温は、変温動物のタンパク質とDNAに作用して、テロメアを短くしていました。
染色体の末端部分にある「テロメア」は生物の健康や寿命に関わる構造体で、損傷や劣化が起きると細胞分裂が止まり、老化につながっていきます。
変温動物は自力で体温を調節できず、また生息地を移動することもできないため、高温状態が続くと体に大きな負担がかかります。
これはストレスレベルを増加させ細胞にまで悪影響を与えます。
チームの一員で、スペインのオビエド大学の生物学者であるヘルマン・オリザオラ氏は、現在の高温状態は変温動物の温度限界を超える場合があると指摘し、「熱波が頻繁に発生すればするほど、変温動物が受ける影響は大きくなる」と述べています。
(Cave Salamander/Peter Paplanus/Flickr)
高温は変温動物の成長も加速させています。
分析では、熱のストレスが代謝を速め、それが急激な成長を促していることが示されました。
これは細胞分裂に関わるテロメアを損傷させ、より短い寿命につながります。
科学者は、「テロメアはDNAを保護しており、失われるのが早いほど細胞の劣化が進み老化していく」と説明し、今回の発見について、「気候変動と老化の関係を明らかにした初めてのものだ」と付け加えています。
高温による成長の加速とそれに伴う短い寿命は、変温動物の脅威となるだけでなく、他の生き物にも深刻な結果をもたらす可能性があります。
寿命が短くなると、子孫を生み出す期間も短くなります。
そのため、干ばつや洪水、熱波、病気といった壊滅的な現象が起きた場合、集団全体が回復できずに絶滅してしまうおそれがあります。
このような集団の絶滅は、変温動物を餌としている他の生き物の生存にも影響を与えます。
研究者は、「変温動物の成長の加速と短い寿命は、気候変動がもたらす問題の一つである」と指摘しています。
また、既に絶滅の危機に瀕している変温動物については保全対策を講じる必要があり、「場合によっては、適切な生息地への移動も検討すべきかもしれない」と述べています。
研究結果は「Global Change Biology」に掲載されました。

オーストラリアには温暖化に強い魚もいるんだよ

成長の加速は必死に適応しようとする結果なのかもしれないな
Reference: EurekAlert