世界最高峰の山であるエベレストには毎年多くの登山者がやってきます。
2016年にエベレストのあるサガルマータ国立公園を訪れた人は、トレッキングの愛好家も含めると45,000人にのぼります。
この数は1979年の12.5倍に相当します。
世界中からやってくる登山者は、現地の人々を豊かにしています。
一方で、山にはゴミが捨てられるようになり、環境汚染が広がっています。
イギリスの研究者は、エベレストの標高の高い地点を調査し、雪や小川の水の中からマイクロプラスチック(5ミリ以下のプラスチック片)を発見しています。
プラスチック汚染は海洋のみならず、地球上で最も高い場所にまで及んでいます。
1リットルの雪の中に平均30個のマイクロプラスチック
2019年、英国プリマス大学の海洋科学者であるイモージェン・ナッパー氏の研究チームは、ナショナルジオグラフィックのエベレスト遠征に同行し、山のあちこちで採取したサンプルからプラスチックを発見しています。
サンプルは、「雪」と「小川の水」の2種類で、標高5300メートルから8440メートルまでの11か所の地点で採取されました。
このうち最も高い8440メートルにある「バルコニー」と呼ばれる地点は、山頂に向かう前の休憩所として古くから利用されてきました。
分析の結果、全てのサンプルからマイクロプラスチックが検出されました。
雪には平均して1リットルあたり30個のマイクロプラスチックが含まれていました。(最少3個、最大119個)
一方小川の水には、1個か2個のマイクロプラスチックしか含まれていませんでした。
これは川の流れによってプラスチックが流されたものと考えられます。
プラスチックの素材は、ほぼ全てがポリエステル繊維であり、おそらくは衣服から放出されたものでした。
バルコニーで見つかったプラスチック繊維 (Credit: Imogen Napper)
登山者が増加するにつれ、エベレストで捨てられるゴミの数も増えています。
特に1990年代以降、ガイドが同行する商業的な登山が盛んとなり、多くの人が山にゴミを捨てるようになりました。
現在エベレストには、いつの時代のものかもわからない、テント、ロープ、使用済み酸素ボンベ、し尿、缶、ガラス、紙といったものが蓄積しています。
マイクロプラスチックは、これらのゴミが劣化し分解されることで発生します。
ナッパー氏は、「マイクロプラスチックは環境のあらゆるところに存在しているため、私たちは地球を守り、大切に扱わなければならない」と述べています。
研究者は、見つかったマイクロプラスチックのほとんどが衣類からの合成繊維であったことから、登山者は可能であれば、綿などの天然繊維を使った防寒具に目を向ける必要があると指摘しています。
現在マイクロプラスチックに関する研究は、主に海や川を中心に行われています。
微小なプラスチック片は、動物たちの生態に悪影響を及ぼすことが示唆されていますが、人間が摂取した場合の健康への影響については、まだよくわかっていません。
WHOは、飲料水に含まれるマイクロプラスチックについて、健康への影響は少ないとする見解を発表しています。
研究結果はOne Earthに掲載されました。
マイクロプラスチックは空を飛んで山にも到達するみたい
環境にやさしい防寒具の開発が待たれるな
Reference: The Guardian