WHO(世界保健機関)は新しい報告書の中で飲料水に含まれるマイクロプラスチックに触れ、その健康へのリスクについて、「現時点では高いとは言えない」とする結論を出しています。
大きさが5ミリ以下の微細なプラスチックであるマイクロプラスチックは、生活排水から川、海へと流れていき、鳥や海洋生物の命を脅かしています。
マイクロプラスチックは海だけでなく、高い山の中腹などでも見つかっており、この人工的な物質が地球全体に及ぼす影響については多くの人が関心を抱いています。
一方で、マイクロプラスチックが体内に入り込んだ場合の健康リスクについては、よくわかっていない部分があります。
WHOは、「マイクロプラスチックだけが水質汚染ではなく、この問題にだけとらわれてしまうことは、別のリスクを増大させるおそれがある」と指摘しています。
マイクロプラスチックが人間の健康を害するとは断定できない
WHOが発表した水道やボトル入り飲料水に関する最新の報告は、「マイクロプラスチックは、人間の健康にリスクを与えるとは断定できない」とし、その理由として、研究データの不足を挙げています。
報告書の作成に携わったWHOのブルース・ゴードン氏は、「これまでに行われてきた研究方法は標準化されておらず、様々なフィルターが用いられてきた」と述べ、現在のマイクロプラスチックに関する研究結果には、大きなブレが存在していると指摘しています。
マイクロプラスチックに関する研究は比較的近年に始まったもので、その手法は科学者によってまちまちです。
ゴードン氏は、「使用するフィルターによって結果が大きく異なる可能性があり、現時点では利用可能な証拠が限られている」と述べています。
WHOはマイクロプラスチックの危険性を過小評価しているわけではありません。
報告書では、150マイクロメートルの大きさのマイクロプラスチックについては、「体外に排出される」とする一方、それ以下のさらに微細なものについては、「危険ではないが、無害でもない」と説明しています。
(JosepMonter/Pixabay)
WHOの公衆衛生部門の科学者であるマリア・ネイラ氏は、飲料水を含むあらゆる場所にマイクロプラスチックが存在している点を認めつつも、この問題を取り上げすぎることで、他の水質汚染問題が見えにくくなってしまっていると警告しています。
WHOの調査によると、現在世界の20億人が毎日汚染された水を飲んでいます。
2016年には水質汚染が原因で、485,000人が命を落としています。
ネイラ氏は、「汚染された水の問題に取り組むことは、マイクロプラスチックの問題に取り組むことにもつながる」と述べています。
WHOはマイクロプラスチックについて今後も分析と評価を続け、健康リスクに関する情報をアップデートしていくとしています。
水の問題がマイクロプラスチックだけじゃないのは確かだね
きれいな水を飲めるようにするのも大事なこと……