マイクロプラスチックを含む飲料水の健康リスクは“高くない”――WHOの最新の報告から

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今や環境問題を語るうえで避けることのできない「マイクロプラスチック」は、世界中に広がり大きな問題となっている……というのが一般的な定説です。

事実、マイクロプラスチックを始めとした微細なプラスチックは海の生物の命を脅かし、最近では陸上だけでなく高い山の中腹や、極寒の北極などにも飛来していることがわかっています。

このようにありとあらゆる場所で見つかっているマイクロプラスチックですが、意外にも人間に対する影響についてははっきりとした結論が出ていません。

 

世界保健機関(WHO)によれば、マイクロプラスチックの健康上のリスクは、“少なくとも今のところ”高くはありません。

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マイクロプラスチックが人間の健康に悪影響を及ぼすかどうかは今のところはっきりしていない

 

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WHOのマイクロプラスチックと水道、及びボトル入り飲料水に関する最新の報告は、「マイクロプラスチックは現在のレベルでは健康リスクをもたらすようには見えない」と述べ、人間に及ぼす影響についてはさらなる研究が必要であるとしました。

マイクロプラスチックは長さ5mm未満と定義されたプラスチックの破片で、河川や湖、海だけでなく地球上のあらゆる場所で発見されており、それは人間が飲む飲料水の中も例外ではありません。

 

WHOが今回の報告で、マイクロプラスチックの健康被害について“保留”ともいえる立場をとったのには理由があります。

それはこれまで報告されてきた健康被害に関するデータが研究者によってまちまちで標準化されておらず、水源に含まれるプラスチック粒子の評価方法が統一されていないことです。

WHOのブルース・ゴードン博士は、これまでに実施されてきた研究は標準化がされておらず、研究者たちが様々なフィルターを用いてきたと指摘します。

 

ある水源には1リットルあたり1000個の微粒子があり、別の水源には1個しか含まれていないということは、単に使用するフィルターのサイズに依存している可能性があります。

 

こうした研究結果の“ぶれ”についてWHOは、水中のプラスチックに関する研究はここ数年で始まった新しい分野であるため、利用可能な証拠は限られていると説明しています。

 

危険ではないが、無害でもない

 

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WHOは決してマイクロプラスチックを過小評価しているわけではありません。

WHOは今回、マイクロプラスチックに関連する3つの潜在的な危険性――すなわち、物理粒子、化学物質、そしてマイクロプラスチックに付着している微生物、について分析をしています。

現時点で入手可能な証拠に基づいて行われた分析結果は、化学物質と微生物に関しては人間の健康に対する懸念が低いというものでした。

また物理粒子に関しては、その大きさが150マイクロメートルを超えるものは人体に吸収される可能性が低くそれらは体外に排出されるとしています。

しかし150マイクロメートル以下の小さな粒子に関しては信頼できるデータがないとし、これらの結果から、マイクロプラスチックを「危険ではないが、無害でもない」と評価しました。

 

WHOの、公衆衛生と環境及び健康の社会的要因部門のマリア・ネイラ博士は「マイクロプラスチックは飲料水を含むあらゆる場所に存在するため、その健康への影響についてさらに詳しく知る必要がある」
と話していますが、この問題を取り上げすぎることで、他の水質汚染の実態から目を逸らすことがないようにすべきだとも忠告しています。

WHOによると世界では20億人もの人が汚染された水を飲んでいて、それを原因とする病気により2016年には485,000人もの人が命を落としています。

WHOは「汚染された水への曝露という大きな問題に取り組むことは、より小さいマイクロプラスチックの問題に取り組むことにつながる」と述べています。

 


 

イギリスの国立海洋研究所の科学者アリス・ホートン氏は、WHOの報告を踏まえ、マイクロプラスチックが広範囲にわたり存在している現状を把握し、それらがどこでどのようにして発生するのかについて掘り下げていくことが健康上のリスクについて知るために必要であると述べ、今後のさらなる研究に期待を寄せました。

ホートン氏は水以外(食品や大気中)からもマイクロプラスチックが検出されている例を挙げ、「1つの曝露経路に焦点をあてるのではなく、より広範な発生源について理解が必要である」と述べています。

 

WHOは将来のレポートにおいて、水源以外からのデータを含んだマイクロプラスチックの健康上のリスクについて改めて評価したいとしています。

 

 

 


 

WHOによると、汚染された水を適切に処理すればマイクロプラスチックの約90%は除去されます。

しかし現在世界では適切に処理された水を飲めない人たちがいて、下痢などの症状により年間で100万人近い人が命を落としています。

マイクロプラスチックの環境への影響は無視できるものではありませんが、WHOとしてはまず目の前にある水質汚染問題に人々の関心を向けたいという考えがあります。

 

マイクロプラスチックが人間の健康にどのような影響を与えるのかについての研究はまだ始まったばかりです。

 

 

 

References:CNN,BBC

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