地球最古のクレーターか、22億年前の氷河期を終わらせた「ヤラババクレーター」

自然
Credit: The Conversation

2003年に初めて存在が報告されたオーストラリアにある「ヤラババクレーター(Yarrabubba crater)」は、地球で最も古いクレーターである可能性があります。

Nature Communicationsに掲載された研究は、ヤラババクレーターの年齢を知るために、ウランが含まれているクレーター内の鉱物、ジルコンとモナザイトの年代測定を行っています。

その結果これらの鉱物に、構造の変化を示す「衝突による再結晶化」の痕跡が見られ、それが22億2,900万年前に起きていたことがわかりました。

これはヤラババクレーターが出来た時期が、現在最古のクレーターとされている南アフリカの「フレデフォート・クレーター」よりも約2億年古いことを示す証拠です。

 

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ヤラババに衝突した隕石はスノーボールアース脱出のきっかけになったかもしれない

 

この時代の地球は、赤道地点までが全て氷で覆われている「スノーボールアース」と呼ばれる氷河期だったと推定されています。

スノーボールアースが実際に起きていた現象であるかどうかについては疑問の声もあります。

もし地球全体が氷で覆われていたとすれば、太陽から届く光の大半が反射し熱が宇宙に逃げてしまうことで、地球は永遠に氷河期を脱出することができなくなります。

しかし実際には、地球はその歴史の中で何度も氷河期を経験してきており、その度に生物の大量絶滅とそれに続く進化が繰り返されてきました。

この疑問に対し地質学者は、地球の活発な地殻変動が火山を起こし、そこで発生した二酸化炭素が大気中に蓄積し、長い時間をかけて氷河期を脱したとする説を提唱しました。

この時代は海も凍っているため排出された二酸化炭素が吸収されず、大気にたまり温室効果ガスとして機能することで地球の温度を上昇させるという理屈です。

 

研究著者の一人でオーストラリアにあるカーティン大学の地球惑星科学部の教授、クリス・カークランド氏は、「ヤラババクレーターは一般的にスノーボールアースと呼ばれる時代の終わりに作られた」と述べ、隕石が衝突した年代と氷河期を脱した年代が一致していることに注目しました。

また同じくカーティン大学の地球惑星科学部の准教授であるニコラス・ティムズ氏は、「ヤラババの衝突が起きた時代は、古代の氷河の崩壊の時期と一致している」と述べ、スノーボールアースを終わらせたのはヤラババでの衝突イベントによるものだという考えを示しました。

 

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研究では、隕石の衝突が当時の地球の気候にどのような影響を与えたのかを理解するために、様々なシミュレーションを行いました。

衝撃波の物理学に基づいたコンピューターモデルは、厚さ5kmの隕石が氷床に衝突した場合、5,000億トンもの水蒸気を大気中に放出するという結果を導き出しました。

水蒸気は宇宙からの放射線を吸収するため、温暖化に寄与する効果的な温室効果ガスになります。

研究者は、隕石の氷床への衝突によって生じた水蒸気の地球全体への影響についてはさらなる調査が必要であるとしながらも、ヤラババに落ちた隕石が温暖化を進めスノーボールアースを終わらせた可能性があると結論づけています。

 


 

南アフリカのフレデフォート・クレーターができたのは20億2,300万年前と推定されており、地質調査からこの時代に氷河が存在していたことが明らかになっています。

一方でヤラババクレーターがそれより2億年も前のものだとしても、当時どれだけの氷河が地球を覆っていたのかは今のところよくわかっていません。

コンピューターモデルではヤラババに落ちた隕石の大きさを5kmに設定することで、地球を覆っている氷を解かすほどの水蒸気が生まれることが示されましたが、22億年前の地球が実際にどうだったのかは今後発見される証拠を待つ必要があります。

研究著者の一人であるカーティン大学のアーロン・カヴォシー氏は、ヤラババクレーターは20年近く目に見える状態にありながらこれまでずっと見過ごされてきたと指摘したうえで、「私たちの発見は、既知のクレーターの正確な年代を知ることが重要であることを強調するものだ」と語っています。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

5,000億トンの水蒸気とかちょっと想像もつかない量だね

ふうか
ふうか

ヤラババクレーターが報告されたのは2003年か……地球にはまだ見つかっていない古いクレーターがありそうだな

 

 

 

References:The Conversation,CNN