オーストラリアのグレート・バリア・リーフ海洋公園局(GBRMPA)は、サンゴ礁の大規模調査を行った結果、グレート・バリア・リーフのサンゴがここ5年間で3回目となる白化現象に苦しめられていると報告しています。
グレート・バリア・リーフでは1998年と2002年、さらには2016年と2017年に非常に深刻なレベルの白化現象が起きています。
海水温の上昇によって引き起こされるサンゴの白化は海洋生態系を狂わせ、ひいては人間にも大きな影響を与えます。
直近の5年間で3回目の白化現象、特に浅瀬のサンゴへの影響が深刻
オーストラリアのジェームズクック大学のサンゴ礁研究センターの責任者で、サンゴの白化現象に関する世界的権威でもあるテリー・ヒューズ(Terry Hughes)教授は、今年の2月から3月にかけてGBRMPAと共同で、グレート・バリア・リーフの上空から682のサンゴ礁を観測し白化のレベルを測定しました。
その結果、一部の地域をのぞいて、大部分のサンゴ礁が広範囲にわたって白化していることが確認されました。
ヒューズ教授は、「今年の白化が1998年や2002年のものよりも深刻なことは確かだ」とし、グレート・バリア・リーフの浅瀬2,300kmに及ぶサンゴの約22%は死滅したと考えられると述べました。
トレス海峡からケアンズにかけての500のサンゴ礁では、特に海岸に近い浅瀬で白化現象が起きており、そこから南下したクイーンズランド州の北東付近の海域では、調査した80のサンゴ礁のほぼ全てが深刻なダメージを受けていました。
この海域で白化したもののなかには、2017年の白化現象を生き延びたと思われる大きなサンゴも含まれていました。
Day 8: Southern nearshore #GreatBarrierReef has widespread, severe #coral bleaching. pic.twitter.com/HspGURBarh
— Terry Hughes (@ProfTerryHughes) March 26, 2020
一方さらに南下したウィットサンデー諸島などの人気の観光スポットではそれほど白化が進んでおらず、緩やかな回復傾向にあることがわかりました。
しかしいくつかの若いサンゴについては白化が進んでおり、これが全体の回復ペースに影響を与える可能性があります。
これより南の海域についても今後すぐに調査が開始される予定になっていますが、ヒューズ教授は、「この海域のサンゴ礁はこれまでにも白化の影響を大きく受けているため、我々はかなりの損失を見ることになるかもしれない」と懸念を示しています。
サンゴを白化させる海水温の上昇は、大気中の温室効果ガスを海が吸収することによって引き起こされます。
海は二酸化炭素の主な吸収源であるため、サンゴを守るには人間の活動が生み出す二酸化炭素の量を抑える必要があります。
白化したサンゴはすぐに死ぬわけではありません。
しかし暖かい海に長時間さらさられるとサンゴに付着している藻が離れていき、サンゴはそこから栄養を得られなくなることでいずれ死に至ります。
サンゴ礁は魚などの海洋生物の住まいでもあるため、白化が進むと海の生態系は大きく乱れてしまいます。
オーストラリアはサンゴ礁の今後5年の見通しを、「非常によくない」としています。
グレート・バリア・リーフはオーストラリアの経済にとっても重要で、年間56億ドル以上の観光収入をもたらすだけでなく、何万もの雇用を生んでいます。
GBRMPAは、サンゴ礁に対する最大の脅威は気候変動であり、二酸化炭素の排出量を削減するための地球規模での取り組みは、今後ますます重要になってくると指摘しています。
海面に近いサンゴほど被害が深刻なんだって
少しとはいえ白化が進んでいない海域があるのは救いと言えるかもしれないな
References: The Guardian,CNN