刺されるとかゆいだけでなく、感染症も媒介する蚊に対しては、世界中から敵意の目が向けられています。
蚊を退治する代表的な方法としては殺虫剤や蚊取り線香、電気ラケットなどがありますが、どれも一長一短であることは否めません。
効率の良い、あるいは斬新な蚊の撃退法を探している場合、新しい選択肢があります。
昆虫研究者によると、蚊はエレクトロミュージックが苦手です。
Skrillexの曲は蚊の交尾や吸血行動に影響を与える
ジカウイルスやデング熱、マラリアなどの病気を媒介する蚊は、特に熱帯地域の貧しい国で駆除が必要とされています。
しかし殺虫剤をはじめとした駆除は一時的に蚊を減らすことはできても、時間が経てば、繁殖によってその数は元に戻ってしまいます。
完全な蚊の根絶は現実的ではないため、研究者はできるだけ安価で環境に負荷をかけない蚊の撃退方法を模索してきました。
ActaTropicaに掲載された研究は、蚊の新しい撃退方法として大音量の音楽を挙げています。
音楽で蚊を殺すことはできませんが、繁殖を中断させることはできます。
研究では、12時間餌の与えられていない蚊をケージに入れ、側にスピーカーを設置したうえで、繁殖や食事の行動がどう変わるのかを観察しました。
ケージの中には蚊の餌である血の通ったハムスターが入れられています。
いくつかの音源のなかで最も蚊の行動を邪魔した曲は、アメリカのエレクトロミュージシャン「Skrillex(スクリレックス)」の「Scary Monsters and Nice Sprites」でした。
この曲は、絶えずピッチが上昇し過度にうるさいことから実験に採用されました。
Skrillex – Scary Monsters And Nice Sprites (Official Audio)
オスとメスの蚊の両方が、「Scary Monsters and Nice Sprites」が流れている間は、繁殖行為も吸血行動も行いませんでした。
しかし研究者を驚かせたのは、曲が終了した後も蚊の行動に影響が残っていることでした。
蚊は曲が終わるとハムスターに吸い付きましたが、対照群である通常の蚊よりもはるかに少ない量しか血を吸いませんでした。
また交尾の回数も減っており、その数は対照群の約5分の1でした。
これらの結果は、蚊の行動と音との間に何らかの関係性があることを示唆しています。
蚊は交尾の際、聴覚を使って相手の羽の音を聞き、行動を調整します。
今回流されたSkrillexの曲は、蚊の羽ばたきに影響を与え交尾を難しくさせたと考えられます。
研究者は、音楽の持つ攻撃的なビートが蚊を混乱させたと説明しています。
過去に行われた別の研究でも、人為的な騒音が昆虫の行動を混乱させることが示されています。
葉を主食とする昆虫がパルスやチャープ信号によって食事を妨げられる例や、ロックバンド「AC / DC」のクラシックナンバー「Back in Black」を聞かされた甲虫が小食になった例などが確認されています。
研究者は、Skrillexのような音楽は、吸血行動を減らし交尾を妨げることができるとしたうえで、今回の結果は、音楽ベースの駆除方法の開発に新しい道を提供するものだと結論づけています。

他の曲でどんな効果があるのかも知りたいねー

蚊は激しい曲でノリノリにはならないのか……
References:LiveScience