化石燃料の環境への影響を懸念する考えが広まりつつある昨今、電気自動車やヒートポンプなどの利用を増やすことで温室効果ガスを減らそうとする取り組みが進んでいます。
しかし一部の人たちは電化の効果を疑っています。
電気もほとんどが化石燃料によって作られるため、実際には二酸化炭素の排出量は変わらないのではないか――
英国とオランダの研究者たちはこの疑問に対し、世界の様々な国や地域の排出量をシミュレートすることで答えを導き出しています。
研究結果は、世界の電化が進めば温室効果ガスが減ることを示しました。
電気自動車は温室効果ガスの削減に貢献できる
英国リーズ大学のとオランダのナイメーヘン・ラドバウド大学の研究者チームは、電化が二酸化炭素の排出量を増やすのではないか、という考えは間違いであると指摘しています。
研究では、電気自動車や家庭の電化が将来の環境に与える影響について知るために、発電量やセクターごとでの使われ方、および二酸化炭素の排出量を元にした評価モデルをつくり、それを世界の59の国と地域の現在のエネルギー政策と掛け合わせました。
その結果、53の地域においては、電気自動車やヒートポンプの使用を促進することで、従来の化石燃料を使った場合よりも温室効果ガスの排出量が減ることがわかりました。
一方ポーランドなどの電力のほとんどを石炭に頼っている国は、原子力発電などに切り替わらない限り、電化を進めても温室効果ガスを削減することができませんでした。
これらの結果は、従来のガソリン自動車や化石燃料を使った暖房などから発生する温室効果ガスの量を電化によって削減できる可能性を示唆しています。
現在世界の輸送や暖房に使われているエネルギーの95%が化石燃料に由来しているため、電化の促進は地球の環境を守るうえで大きな役割を果たすことができます。
研究者は2050年には路上の車の2台に1台が電気自動車になり、これによって年間で最大1.5ギガトンの二酸化炭素を削減できると予測しています。
この量は、現在のロシアが排出している量に相当します。
Nature Sustainabilityに掲載された研究の著者の一人で、オランダのナイメーヘン・ラドバウド大学のフローリアン・ノブロック(Florian Knobloch)氏は、現在多くの電気自動車に関する間違った情報が出回っていると指摘したうえで、「電気自動車が温室効果ガスの排出量を増やす可能性があるという考えは完全に神話である」と断言しています。
研究者は、電化を進めることが全ての解決にはならないとも指摘しています。
研究著者の一人であるリーズ大学のグレッグ・マースデン(Greg Marsden)氏は、「電化は必要だが現時点では十分ではない」と述べ、気候変動に対抗するにはガソリン車から電気自動車への大胆な転換が不可欠だと強調しました。
また、「現在の旅行需要の少なくとも20%を削減する必要がある」とも述べ、電気自動車の普及を含めた非常に大きな社会的変化がなければ気候目標を達成することはできないと付け加えました。
研究者は、電気自動車やヒートポンプへの移行によって、ほぼ全ての国や地域の温室効果ガスの排出量は化石燃料を使った場合よりも削減されると結論づけています。
電気のほとんどが化石燃料によって作られているが、原子力もまた別の問題を抱えている
日本はエネルギー自給率が低いから、クリーンなエネルギーについて今から考えていかないとね
References: BBC