2015年のパリ協定は、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前の水準から2度以下に抑えることを採択しました。
気候変動は自然災害を増やしまた強力にするため、世界各地でこれまで考えられなかったような被害が起こることが懸念されています。
温暖化に懐疑的な見方をする人たちは、パリ協定の目標を達成するにはコストがかかりすぎると主張します。
また一部の過激な人たちは、気候変動に対抗するために行動している人に対し、現代的な生活を捨て原始時代に戻らなければ偽善であると非難の言葉をぶつけています。
しかし実際には、パリ協定で示された目標を達成することほど、低コストの温暖化対策はありません。
気温の上昇を抑えるために行動するのが遅れれば遅れるほど、人類は多くのコストを支払わなければならなくなります。
気候変動に対し何も行動しないほうが将来的なコストは増加する
ドイツのポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research-PIK)の気候科学者アンダース・リーバーマン(Anders Levermann)氏たちのグループは、2018年にノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・ノードハウス(William Nordhaus)氏の開発したコンピューターモデル「DICE」を使って、将来の気候変動の影響を経済的な側面から分析しました。
「DICE(Dynamic Integrated Climate-Economy)」は気候変動が経済にどのような影響を及ぼすのかを予測するために作られたコンピューターモデルで、温室効果ガスの排出削減コスト、異常気象の増加などによる被害、気候変動に関連した労働力の減少など、様々な観点から気候と経済の関係性を評価する仕組みになっています。
研究グループはDICEを使って、気温の上昇と世界の国内生産(GDP)の推移を2020年から2100年までシミュレートしました。
プログラムは、気候変動による消費パターンの変化や世界中で起こる紛争などが、経済に不確実性を与えることを予測しました。
研究者は得られたデータから気候変動によって生じる経済的損失を算出し、それをパリ協定の目標を達成するのに必要なコストと比較しました。
その結果、世界の平均気温の上昇を2度以下に抑えるというパリ協定の目標は、他のどんな行動よりも将来的な経済的損失が少ないことが明らかになりました。
これは経済的な面から言えば、気候変動に対し何もアクションを起こさないよりも、パリ協定の設定した目標のために行動した方が結果的に安上がりになることを意味します。
研究者の一人であるPIKの気候科学者スヴェン・ウィルナー(Sven Willner)氏は、「2度前後の温度制限は驚くほど堅牢で合理的なものである」と述べ、気温の上昇を抑えるという行動は他の選択肢に比べてコスト曲線が際立って優位であったと強調しました。
研究者たちはこれらの結果に基づいて、地球の温度上昇に歯止めをかけるためには「迅速かつ世界的な行動」が必要であると結論づけています。
リーバーマン氏は、「世界は何もせずに座っていることを正当化する言い訳を失いつつある」と指摘し、コストを理由に気候変動を抑えるための行動を否定している人たちに対し、真実に目を向けるよう促しました。
そして、これまでのようなビジネスのやり方はもはや実行可能な選択肢ではなく、それは社会のコスト増につながるとして、世界中の企業に脱炭素化を進めるよう求めています。
研究結果はNature Communicationsに掲載されました。
温暖化を否定している時間があったら、何か一つでもできることをした方が地球と人類のためになるということだな
難しい課題だけど、みんながもっと地球の未来に関心を持ってくれるようになるといいね
References: ScienceAlert