Facebook、Twitter、YouTubeといったサービスには科学に関する無数の動画が存在しています。
しかしそれらの全てが正しいという保証はありません。
インターネット上の気候変動に関する情報を分析しているドイツの研究者は、科学的に根拠のない動画をYouTubeから数多く発見しています。
誤った知識は、気候変動に対する人々の考え方と行動に大きな影響を及ぼします。
気候変動を陰謀論と結びつけるケムトレイル動画
ドイツのアーヘン工科大学の社会学者ヨアヒム・アルガイアー氏は、科学知識がインターネット上でどのように広がっていくのかを分析するため、YouTubeにアップロードされている動画を検証しました。
まず最初は、科学をテーマにしたミュージックビデオを検索しました。
これらのビデオは、ヒット曲に科学的な要素をミックスしたパロディ作品で、そのほとんどが想像力に富んだ素晴らしいものでした。
しかし一部の作品は、科学的に根拠のない独自の解釈を元にした内容でした。
次にアルガイアー氏は、「気候変動」、「地球温暖化」、「気候科学」といった、気候に関連する用語を含む10の単語で検索を行い、リストアップされた上位20ずつ、合計200の動画について科学的かどうかを検証しました。
200本の動画のうち89本は、「気候変動は人間の活動が引き起こしている」という説を支持していました。
また16本の動画は、「気候変動と人間の活動には関わりがない」としており、4本の動画は「どちらでもない」という中立な立場をとっていました。
気候変動とそれに伴う温暖化は、住む場所や経済状況によって感じ方が異なります。
そのため、誰でも動画を投稿できるYouTubeに多様な動画が存在するのは当然のことです。
しかし200本の動画のうちの91本は、明らかに科学とはかけ離れていました。
(Chemtrail/Schueler-Design)
問題の動画は気候変動を「陰謀論」と結び付けるもので、2004年頃から急速に広まった「ケムトレイル (Chemtrail)」の考え方を元にしています。
ケムトレイルは気候変動の原因を、「飛行機が散布する化学物質」としていて、空に見える飛行機雲がその証拠だと主張します。
ケムトレイルの支持者は、政府、大学などの研究機関、製薬会社などが気候変動を引き起こす黒幕であると信じています。
彼らの主張に従うならば、飛行機雲は地球の気候を変化させるためにまかれた汚染物質です。
しかしもちろん、それを証明する科学的根拠は存在しません。
アルガイアー氏は、YouTubeが毎月20億人が訪れる巨大なコミュニティであることから、「陰謀論に基づいた動画の存在は、人々の気候変動に対する誤った考え方につながる」と述べています。
アメリカの成人4581人を対象にした2018年の調査では、およそ21%の人が、YouTubeからニュースを受け取っていることが明らかになっています。
またドイツで行われた14歳から29歳までを対象にした同様の調査でも、回答者の70%が、YouTubeなどのオンライン動画サービスから科学に関する情報を得ていることがわかりました。
「気候変動」や「地球温暖化」は既に一般的な単語になっており、検索で表示される動画のほとんどは科学的に正しい情報を扱っています。
一方で「気候操作」、「地球工学」といった耳慣れない単語で検索した場合、それらの多くがケムトレイル動画に行きつきます。
アルガイアー氏は、科学的に不正確な情報が拡散している状況に対し「行動を起こす必要がある」と指摘し、人々が誤った情報に踊らされることのないよう、科学者自身が積極的に動画をアップロードしていくべきだと話しています。
今は何でも動画で情報収集する時代……
ネットにある情報が全て正しいわけじゃないから見るほうも気をつけないとね
Reference: ScienceNews
(2019年8月の記事に加筆、修正を加えました)