地球には生命が溢れています。
ほとんど全ての場所に生命の痕跡が見られ、通常では考えられないような環境――乾燥した砂漠や凍ったツンドラ、海底の最深部にさえ何らかの生物が存在しています。
あらゆる場所に生命が存在しているという事実は、地球が宇宙の中で特別な星である大きな理由の一つですが、科学者は生命が全く存在できない場所が地球にもあることを発見しました。
フランスの研究チームは、エチオピアの「ダロル」という地域には生命が存在していないことを明らかにしています。
この事実は、太陽系の他の惑星や太陽系外惑星での生命の可能性について疑問を投げかけるものです。
生命が一切存在しない場所、ダロル
フランス国立科学研究センターの生物学者で研究著者のロペス・ガルシア氏たちの研究チームは、エチオピア北部にあるダロル地域には生命の痕跡が認められなかった、と報告しています。
科学誌Nature Ecology&Evolutionに掲載された研究結果は、これまで科学者が支持してきた他の惑星における生命存在の根拠、すなわち、地球の極限環境に生命が存在するのなら他の星の似たような環境にも生命が存在するはずである、を覆しかねないものです。
ダロル地域は地球で最も暑い場所の一つとして知られ、年間の平均気温は1960年代の調査で35度以上、日中の最高気温は冬でも45度を越えることがあります。
ダロルには火山や非常に活発な熱水系があり、多数の泉や噴気孔が存在します。
科学者にとって水の存在は生命の存在と同義です。
これは、惑星科学者が地球以外の星で生命を探そうとする際の根拠にもなっています。
しかしガルシア氏たちの調査結果は、ダロルのような極限環境が生命を排除することがあり、例えそこに水が存在していたとしても生命が生まれるとは限らないことを示したものです。
photo by Michael Meraner on Flickr
ダロルがとてつもなく熱い場所であり、生命が存在しづらい環境であることは以前から知られていました。
ガルシア氏たちのチームは以前の研究で得られたデータを再分析し、最新の方法を使って、もう一度ダロルに生命が存在しているのかを調査しました。
微生物を発見し分類するために遺伝子マーカーのデータを用いたり、また培養や個々の細胞を検出するための化学分析、さらにX線を使った電子顕微鏡観察なども行いました。
その結果ダロル地域には、水のある環境も含めて、生命が一切存在していないことがわかりました。
ガルシア氏は、「砂漠や熱水地域には高度好塩菌(塩分の高い環境を好む微生物)が見られますが、ダロルの酸や塩分を含んだ池や、マグネシウムが豊富に存在する湖にも生命は存在していなかった」と語っています。
調査ではシリカを含んだ鉱物を発見しています。
シリカは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称で、これを含んだ鉱物は、化石化した細胞と解釈されることがあります。
しかしダロルで見つかったシリカ鉱物には生命の痕跡が全くなく、塩分を含んだ水の中で自然に形成されたものであることがわかりました。
ガルシア氏は、ダロルという極限の環境に生命が存在していないという事実は、他の惑星の同様の環境においても同じ結果につながる可能性があると指摘します。
私たちの研究は、ダロルの水たまりのように、地球には液体の水を含んでいても生命が存在していない場所があることを示しています。少なくとも地球の生化学に基づいて考えるならば、他の惑星の同様の環境で生命体を見つけることは期待できないでしょう。
ダロルに存在する池や水たまりには水素の分解を助けるマグネシウムが存在し、また高い塩分濃度や酸性であること、そして高温であることなどと相まって生命が形成されにくい環境になっています。
他の惑星の似たような環境も――たとえそこに水があったとしても――ダロルのように生命が存在できない場所である可能性があります。
ガルシア氏たちのチームは引き続きこの地域を調査し、生命が存在できる限界についてさらに学びたいとしています。
すごい景観!こんな場所もあるんだ~
水があっても生命がいるとは限らないんだね
References:CNN