T.レックス(ティラノサウルス)は絶滅してしまいましたが、私たちは化石からその大きさや姿を想像することができます。
現在多くのT.レックスの化石標本が存在するなか、最も有名なのが、90%以上の残存率を持ったシカゴ自然史博物館の“スー”でしょう。
スーは残っているT.レックスの化石のなかで、最も保存状態が良くなおかつ最大の個体とされています。
しかし一部分においては、そのトップの座を明け渡すことになるかもしれません。
カナダで1991年に発見された“スコッティ”とよばれるT.レックスは最も巨大なT.レックスである可能性があります。
T.レックス“スコッティ”の新記録
スコッティは1991年にカナダのサスカチュワン州で発見されました。
しかし発見場所は固い砂岩に埋もれていたため、発掘には10年以上の年月を要しました。
発掘後も古生物学者は一つ一つの骨の復元作業に追われました。
全ての骨を復元したときにわかったことは、スコッティの骨の残存率が約65%だったこと、大腿骨の大きさから推定される体重が約8800kgであること、鼻から尻尾までの長さが約13mであることなどで、これはスコッティがこれまでにないほど巨大なT.レックスであることを示す重要な証拠でした。
またスコッティの骨からは、彼がかなりの長生きだったことがわかりました。
骨には木の年輪と同じように、食生活や気候の変化などによって成長時期が刻まれていて、古生物学者はこれを使って持ち主の年齢を推定することができます。
これまで最も長生きだとされているT.レックスは2013年に発見された「Trix」で、その年齢は約30歳でした。(スーは28歳)
スコッティは骨の年齢調査からTrixよりも数年年を重ねていることが判明し、おそらく30代前半まで生きていました。
30年以上生きる個体はT.レックス基準ではかなりの長生きになります。
さらに骨の調査からはスコッティが大きな怪我をした後、治癒をした形跡が認められました。
怪我はろっ骨の骨折の他に、あごの感染症や他のT.レックスによって受けた咬傷の痕跡もあり、スコッティが生きていた時代には、恐竜同士で壮絶な戦いが繰り広げられていたことがわかります。
カナダのアルバータ大学の古生物学者Scott Persons氏は、スコッティをT.REXの中のT.REXとよんでいます。
そして今後も大きな発見があると思うと語り、現時点でスコッティが知られているなかで最大の陸生捕食者であると語りました。
最大のT.レックスとされるスーは全長12.3m、体重は8400kg~14000kgと推定されています。
しかし体重に関しては骨から推測するしか手段がないので実際のところはわかりません。
それこそ映画ジュラシックパークのようにDNAから再現でもしないとわからないのですが、それを言うのは野暮というものでしょう。
調査や研究によってまた新たな発見があると思いますが、それまではスコッティが最も大きいT.レックスの座に座ることになりそうです。
2005年にはスコッティの頭蓋骨が日本でも展示されたことがあるので、今度はチャンピオンとして再び日本に訪れてほしいですね。
スコッティは今年の5月からロイヤル・サスカチュワン博物館で公開展示されることになっています。
References:LiveScience