アメリカでは気候変動を実際の脅威と感じる人が増えています。
2018年と2019年に行われた世論調査と国勢調査では、気候変動への懸念から、子供を産まないと回答した人が一定数存在しました。
近年、温室効果ガスを削減する取り組みが各国で行われるようになっていますが、その効果や意義については否定的な立場をとる人もいます。
一方で、気候変動を現実と捉えている人は、自分の人生設計に温暖化の問題を取り入れ始めています。
新しい研究は、気候変動が人々の将来への不安を助長し、子供を持つのをためらわせていることを明らかにしています。
気候変動は将来の見通しを暗くする
シンガポールのイェール-NUS大学の研究者は、アメリカで行われた世論調査や国勢調査のデータをきっかけに、気候変動が人々の生殖にどのような影響を与えているのかを調べています。
調査はアンケート形式で行われ、アメリカに住む27歳から45歳までの607人が対象となりました。
全体の96.5%は、将来の子供たちが気候変動の影響を受け、苦労を強いられるようになると回答しました。
悲観の度合いは回答者によって異なるものの、一貫していたのは、地球温暖化が止まらなければ、子供たちが住む環境は今よりも悪くなるという考えでした。
気候変動への懸念は若い世代ほど顕著で、ある27歳の女性は、「将来は終末論的な状態かもしれず、そこに子供を連れていきたいとは思わない」と書いています。
温暖化の進むスピードは、人間の活動が生み出す二酸化炭素によって促進されます。
これは究極的には、将来の地球にとって、人間の存在そのものが不要であるという考えにつながります。
回答者の59.8%はこうした考えを持っており、子供を作ること自体に否定的な見方を示しました。
31歳の女性は、「気候変動は子供を持たないことを決定する上で唯一の要因です。私は心から母親になりたいが、死にゆく世界で子供を産みたくはない」と述べています。
回答者の4分の3は女性でしたが、気候変動の捉え方に、男女間での有意な差はみられませんでした。
研究を主導したイェール-NUS大学のマシュー・シュナイダー-マイヤーソン氏は、回答者の多くが、子供を持つことや子供たちの将来について心配していた点に触れ、「これに対処するには、原因である気候変動に直ちに立ち向かう必要がある」と述べています。
回答者の中には、出産を後悔していると語った女性や、2050年の未来は地獄のような風景になっているだろうと書いた男性もいました。
これらの結果は、極端なものも含め、気候変動が人々の考えを悲観的にしていることを表しています。
2020年に行われたアメリカの世論調査では、子供のいない18歳から44歳までのうち、14%が、子供を持たない理由に気候変動を挙げました。
今回の調査は比較的高学歴でリベラルなアメリカの白人を対象にしたものですが、気候変動への懸念は、ごく一般的な人々の間にも広がりつつあります。
シュナイダー-マイヤーソン氏は、「気候変動への悲観的な見方は、他の全てに影響を与える」と指摘し、今後、さらに別の人種や地域を対象に研究を行う必要があると強調しています。
研究結果はClimatic Changeに掲載されました。
良い環境を子供たちの世代につなげていかなくちゃね
地球の未来は気候変動をどう捉えるかにかかっているな
Reference: The Guardian