イギリス気象庁を中心とした国際的な科学者チームは、今年シベリアで記録された最高気温について、「気温の上昇は人間の活動によって引き起こされたものである」とする分析結果をまとめています。
2020年前半のロシアの気温は、これまでの平均から5℃以上も上昇しました。
6月20日には、人が住む最も寒い場所として知られるベルホヤンスクで、北極圏における最高気温である38℃が記録されています。
科学者チームは、シベリアでの記録的な気温の上昇は8万年に1度あるかどうかの事象であり、人間の存在なくしては起こらなかったと結論づけています。
最近の気温上昇は人間がいなければ起きなかった
科学者はコンピューターシミュレーションを使用して、現在の気候を、人間の干渉がない場合の気候と比較しました。
その結果、シベリアでの高温イベントの発生が、産業、輸送、農業からの温室効果ガスに起因していることがわかりました。
人間の活動はシベリア地域に、少なくとも2℃の気温上昇をもたらしたと推定されています。
イギリス気象庁の科学者であるアンドリュー・シアバレラ氏は、「これは世界中でより頻繁に見ることになると予想される極端な温度の証拠である」と述べ、「高温イベントの増加は温室効果ガスの排出によるものだ」と指摘しました。
またチームの科学者の1人で英国オックスフォード大学のフリーデリケ・オットー氏は、「人間の干渉の証拠がこれほどはっきりしている例はほとんどなく、気候変動によって、北極圏のコミュニティでさえも極度の暑さに対抗しなければならなくなる」と述べ、今後のシベリア地域の気温に懸念を示しました。
2020年前半の気温と1981年から2010年までの平均気温との差。シベリア地域での気温上昇が顕著 (Image: Met Office)
温暖化は特に寒い地域で大きな影響を及ぼします。
今年の5月、ロシアの工業都市ノリリスク近郊の発電所で永久凍土の融解によるものとみられる原油流出事故が起き、またシベリアの森林では、極寒であるにもかかわらず火災が発生し多くの木が失われました。
氷が解けると太陽の光を反射できず熱が地面に伝わり、火災の危険性が増します。
EUの地球観測プログラムである「コペルニクス」によると、シベリア地域では4月から6月にかけての火災で、記録上最大となる5,600万トンの二酸化炭素が放出されました。
またNASAはシベリアでの森林火災について、火が完全に消えず泥炭でくすぶった場合、春に再び燃え上がる可能性があると警告しています。
北極圏は他の地域の2倍の速度で暖かくなっています。
1850年以降、世界の気温は1℃上昇しましたが、北極圏では2℃も上昇しています。
イギリス気象庁は現時点の気温が2016年の水準に達していないことから、今後の気温上昇については慎重な見方を示していますが、多くの科学者は、既に地球の気候が新たな時代に入っていると考えています。
イギリス気象庁のシアバレラ氏は、「重要なのは、温室効果ガスの削減によって極端な高温イベントの発生を緩和できることだ」と述べています。

科学者は2030年までにCO2の排出量を半分にする目標を掲げてるよ

あと10年……簡単には達成できないかもしれないな
References: Met Office,The Guardian