イギリスとグリーンランドの研究者は、低コストの撮影システムを使って、深海のサンゴの楽園を発見しています。
サンゴは水深500メートルほどの太陽の光が届かない地点で撮影されました。
海の約80%を占める深海は調査のためのコストが高く、今でもそのほとんどが明らかになっていません。
今回使われた安価で革新的な撮影システムは、今後、海洋生態系の研究に生かされる可能性があります。
光の届かない場所で見つかったサンゴの楽園
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとロンドン動物学会(ZSL)、そしてグリーンランド天然資源研究所の科学者たちは、スチールフレームにGoProのカメラとライトおよびレーザーを取りつけた安価なシステムを制作し、西グリーンランドの海底を撮影しています。
この海域では海底をまるごとさらうトロール漁が行われていますが、生態系についてはよく理解されていません。
従来の方法よりも低コストで行われた海底の撮影は、グリーンランドの海にサンゴを中心とした豊かな生態系があることを明らかにしただけでなく、その保護の必要性も浮き彫りにしました。
Frontiers in Marine Scienceに掲載された研究の著者の一人であるZSLのスティーブン・ロング氏は撮影について、「深海は探査の観点から見過ごされており、実際深海の地図よりも火星の表面の地図の方が優れている」と説明し、「深海環境に耐えることのできる低コストのツールの開発は、海洋生態系の理解と管理に新しい可能性を開く」と述べています。
使用された安価な撮影システム (Credit: Stephen Long)
水深1,500メートルまで到達することのできるカメラは、ミニクーパーほどの大きさのフレームに取り付けられ、西グリーンランドの18の地点の海底をそれぞれ約15分間撮影しました。
その後映像のなかから1,239の画像を抽出し、映っている生物について記録していきました。
全ての生物の合計は44,035で、そのうち最も多かったのはイソギンチャクの15,531、次点がカリフラワーサンゴと呼ばれるサンゴの種11,633でした。
カリフラワーサンゴは1平方メートルあたり、最大9.36の密度で観察されました。
撮影のなかで最も研究者を驚かせたのは、水深500メートルを超えた地点で発見された486平方キロメートルにもわたるサンゴの楽園です。
(Credit: ZSL/GINR)
この光の届かない場所にはサンゴのほかに、イソギンチャク、ウミユリ、カイメン、クモヒトデ、コケムシなどの豊富な生き物が生息していました。
海中では水深10メートルごとに気圧が1ずつ上昇します。
そのため深海の調査には、圧力に耐えられる高価な遠隔操作車両や有人潜水艦が必要になります。
しかし今回の撮影に使われたシステムは、それらよりもはるかに低コストです。
ロング氏は、「我々の研究は、グリーンランドの220万平方キロメートルにわたる深海を調査するために、低コストのDIYビデオが使用された最初の例である」と述べています。
また共同著者の一人であるZSLのクリス・イエッソン氏は、「海洋が地球上で最大の生息地であり、私たちが最も知らない場所であることを考えると、安価で利用可能な研究ツールを開発することは極めて重要である」と話しています。
研究チームは今回の調査結果を元に、サンゴのある海域が「脆弱な海洋生態系」として認識されることを願っています。
サンゴは暗くて冷たい海底にも生息してるんだね
安価な撮影システムで他の海域の調査も進むといいね
References: EurekAlert