乾いた地面に雨が降るといい匂いが漂います。
この匂いは細菌の一種が死んた際に発するもので、人間だけでなく周囲の様々な生き物を引き寄せています。
しかしなぜ細菌は、わざわざこのような匂いを出すのでしょうか。
新しい研究は、細菌が匂いを使って自分たちの領土を広げていることを明らかにしています。
雨が降ったときのいい匂いは細菌が生存していくための戦略
土壌に広く分布しているストレプトマイセス属の細菌の一種は、死亡した際に「ゲオスミン」と呼ばれる揮発性の有機化合物を放出します。
ゲオスミンは「ペトリコール」とも呼ばれる独特の土臭い匂いのもとであり、人間だけでなく周囲のたくさんの生き物を引き寄せていますが、匂い自体にどんな生態学的な意味があるのかはよくわかっていません。
イギリス、スウェーデン、オーストラリアの国際的な研究チームは、ゲオスミンの匂いに最も引き寄せられる生き物が何であるかについて広範囲な実験を行っています。
チームは、ゲオスミンと2-MIB(ゲオスミンと同じような匂いを放つ)の2つの有機化合物を使って罠を作り、それらが放つ匂いにどんな生物が反応するのかを野外と実験室の環境で観察しました。
その結果、土壌に生息する「トビムシ」と呼ばれる節足動物が、最も強く匂いに引き寄せられることがわかりました。
森林の土壌に生息する乾燥に弱いトビムシは、ゲオスミンの匂いに強く反応し、匂いのもとであるストレプトマイセスを食べました。
トビムシの一種 (Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)
観察からは、トビムシがゲオスミンの感知に触覚を利用していることや、彼らの体にストレプトマイセスの芽胞(胞子)が付着していることなどが確認されました。
トビムシはあちこちで食事を繰り返し糞をすることで、ストレプトマイセスの子孫である芽胞をまき散らしました。
ゲオスミンの匂いはトビムシをおびき寄せ彼らに食事を提供する一方、ストレプトマイセスの生息域を広げ、次世代に命をつなげることにも貢献しました。
研究者は、「ゲオスミンと2-MIBの生産は芽胞の分散を促進させる」と説明し、この匂いは、ストレプトマイセスのライフサイクルの完成に不可欠な要素であると結論づけています。
研究結果はNatureに掲載されました。
雨が降ったときの匂いってなんかいいよねー
人間も知らないうちに細菌の繁殖に手を貸しているのかもしれないな
References: ScienceAlert