輪ゴム、網、針……カモメたちの住む無人島で発見される大量の人工物

自然
Image by Charles London from Pixabay

イギリスの南西端に位置するコーンウォールの海岸から約1キロ離れた場所にある無人の島マリオン島は、海鳥たちの聖地として知られています。

ここにはオオカモメやセグロカモメ、ウ(鵜)など多くの鳥たちが生息しています。

イギリスのボランティア団体ナショナルトラストや、2013年から現地で鳥たちの監視活動を行っているグループなどによると、マリオン島ではここ最近、ある人工物が発見されるようになってきています。

それは鳥たちが餌と間違えて咥えたものの、後になって吐き出したものだと考えられています。

 

スポンサーリンク

 

無人島には存在し得ない人工物があちこちで発見される

 

鳥類は消化できなかった食べ物を「ペリット」と呼ばれる塊として吐き出します。

鳥類学者はこのペリットの成分を調べることで、鳥が何を食べているのかや、どういった病気にかかっているのかなどを鳥を傷つけることなく知ることができます。

マリオン島のオオカモメやセグロカモメももちろんペリットを吐き出します。

鳥たちの聖域である無人島マリオンでのペリット調査は、ここに住む鳥たちの健康状態を知る上で欠かせない活動の一つです。

しかし近年この島で見つかるペリットには、通常では考えられないものが含まれるようになってきました。

その、島には存在し得ない人工物「輪ゴム」は島のあちこちで見つかりました。

輪ゴムは黄色いものだけでなく、黄褐色や緑といった様々な色のものが含まれています。

 

鳥たちの鳴き声を研究しているウェストコーンウォール・リンギンググループ(West Cornwall Ringing Group)のマーク・グランサムさんは、わずか1時間で数千もの輪ゴムと漁業廃棄物を島で発見したと語ります。

 

私たちはなぜ大量の輪ゴムがあちこちにあるのか困惑していました。

 

グループは鳥たちが巣を作りやすい状態を保つために、繁殖シーズンには島を訪れゴミを片付ける活動をしています。

オオカモメやセグロカモメは、IUCN(国際自然保護連合)が作るレッドリストの中では、今のところ絶滅が危惧される種ではありません。

しかし島に住むカモメのうちセグロカモメはここ最近繁殖活動が鈍っており、またイギリス全土のセグロカモメの数はこの数十年で30%も減少しています。

カモメの数を減らしている原因について知ることは、鳥類学者や自然保護活動家にとって急務の課題です。

 

人間が立ち入ることができない無人島で見つかった大量の輪ゴムとセグロカモメの減少には何か関連があるのでしょうか。

そもそもどうやって輪ゴムが運ばれてきたのでしょうか。

ウェストコーンウォール・リンギンググループは、犯人を鳥たち自身であると睨んでいます。

 

輪ゴムはどこからやってきた?人工物の自然への影響と人類の責任

 

マリオン島で見つかった大量の輪ゴムや人工物 Image Credit:National Trust/Seth Jackson

 

マリオン島は人の住む地域(海岸沿いの町)からわずか1キロしか離れていないため、島に住むカモメたちは餌を得るために難なく海を渡ることができます。

海岸沿いはカモメたちの餌となるもので溢れています。

人間の食べるランチもそのうちの一つですが、グループは輪ゴムの出どころとして近くの園芸畑に焦点を絞りました。

 

海岸の近くで切り花を生産している農家では、花を束ねるために色とりどりの輪ゴムを使用しています。

輪ゴムは鳥から見ればおいしそうなワームのように見えるため、島からやってきたカモメが花を束ねる輪ゴムを虫と勘違いして口にしたことは容易に想像がつきます。

そしてもちろん輪ゴムには栄養がないため、カモメたちはそれらをペリットとして吐き出すことになります。

 

島のペリットには輪ゴム以外にも漁で使用される糸や網、針なども含まれていました。

詳しい調査ではマリオン島にある輪ゴムは最近のものだけでなく、数十年前の古いものも存在していることがわかっています。

無人島であるマリオン島で大量の輪ゴムが見つかったことは、私たちが考えている以上に自然が人工物であふれていることの証拠です。

 

島を管理しているナショナルトラストのレンジャーであるレイチェル・ホルダーさんは次のように語ります。

 

マリオン島のような場所は海鳥の聖域であるはずなので、それらが人間の活動によって犠牲になるのを見るのは苦痛です。

 

ナショナルトラストは現在、地元の企業や住民に対し、プラスチックやラテックス、ゴムなどの廃棄物の処理法に関し再検討するように求めています。

そして使い捨て材料がマリオン島のような遠隔地にも影響を与えていることを指摘し、生産者だけでなく消費者も人工物の使用方法と廃棄方法について責任を負う必要があるとしています。

 

 

 


 

イギリスのセグロカモメの減少には、餌となる魚の減少も大きく関与しています。

餌の減ったカモメは人間のランチタイムを襲うだけでなく、輪ゴムや漁業に使われる糸などを間違って口にしてしまいます。

人工物を生み出し続ける人類がその廃棄に至るまで責任を持つようにしなければ、カモメたちの悲しい食事が終わりを迎えることはないでしょう。

 


 

 

かなで
かなで

鳥さんから見れば輪ゴムは虫に見えちゃうから危ないよね

しぐれ
しぐれ

捨てたものが最終的にどこに行くのかもっと関心を持たなきゃいけないね

 

 

 

 

References:CNN,ScienceAlert