カナダの研究者は森林の土壌の分析から、樹木の成長に、菌類のネットワークが関わっていることを発見しています。
植物の根には「菌根菌 (きんこんきん)」と呼ばれる菌類が存在しています。
菌根菌は植物と共生関係にある菌類で、地中に張り巡らせた「菌糸 (きんし)」を使って栄養分を吸収し宿主に送る代わりに、植物からエネルギーをもらっています。
菌糸は近くの木から伸びた別の菌糸と結びつき、地中で巨大なネットワークを作っています。
過去の研究では、菌根菌による栄養が若い樹木の成長を促進していることが示されていますが、より大きな樹木にどう作用しているのかはよくわかっていません。
新しい研究は、地下の菌糸ネットワークがあらゆる樹に恩恵を与えていることを明らかにしています。
樹木の成長を促進する菌糸ネットワーク
カナダのアルバータ大学の生態学者であるジョセフ・バーチ氏の研究チームは、菌糸ネットワークの樹木への影響を調べるため、2000年から2016年にかけて350本のマツからサンプルを採取し、年間の成長率を記録しました。
サンプルからは菌糸ネットワークの地図が作られ、樹木の成長と菌糸の関係性を分析するために使用されました。
調査の結果、地中に広い菌糸ネットワークをもっているマツほど、年ごとの成長率が高くなることがわかりました。
マツの成長率は年齢とは関係がなく、地中でどれだけのマツと交流しているかが最も重要なポイントでした。
バーチ氏は、「樹木同士がつながっていればいるほど成長に大きな利点がある」と説明し、菌糸ネットワークについて、「炭素の貯蔵などの、森林内の重要な相互作用に影響を与えている可能性がある」と述べています。
菌糸ネットワークには、栄養のやり取り以外にも、危険な昆虫の攻撃を知らせたり、健康状態の悪い木を優先して助けたりする機能もあると考えられています。
広い菌糸ネットワークは木を増やし、二酸化炭素を吸収する森を作ります。
バーチ氏は、「樹木がより早く成長すれば、森林は干ばつに耐える能力も得られるかもしれない」と述べています。
今回の研究はマツ一種のみを対象としたものであり、他の樹木の菌糸ネットワークがマツと同様の働きをするかは不明です。
研究者は今後、他の樹木の菌糸ネットワークについても分析を行いたいとしています。
研究結果はJournal of Ecologyに掲載されました。
菌根菌をうまく利用できれば森林の再生につながるかもしれない……
地面の下では樹木同士のやりとりが行われてるんだね
Reference: ScienceAlert