イギリスの研究者は、夜間の光の量と生態系の関係性を分析した結果、人工的な光により動植物の行動パターンが変化していると報告しています。
人類は夜を明るくしようと照明を開発し、今では地球上のあらゆる場所が光で覆われるようになりました。
しかし動植物にとって明るい夜は、自然に反する異常な状態です。
人工的な光は、生き物のホルモンバランスを崩し行動パターンを狂わせます。
動植物の行動を狂わせる夜間の人工的な光
英国エクセター大学の生物学者は、人工的な光が生態系に与える影響を調べるため、過去に公開された126の論文をまとめ、改めて分析を行っています。
人工的な光が動植物の成長や行動に影響を与えること自体は知られています。
しかしこれらの研究は特定の地域の特定の種に焦点をあてており、地球規模での観察結果ではありません。
近年地球の夜はますます明るくなっており、その光の範囲と量は年間で2%ずつ増加しています。
分析では人工的な光が、動物のホルモンレベル、繁殖周期、活動パターン、捕食者に対する脆弱性に影響を与えていることが示されました。
影響の度合いは様々ですが全てに共通しているのは、睡眠サイクルを調節しているメラトニンの減少です。
メラトニンの減少は、夜行性と昼行性を問わず動物の行動を変化させます。
夜行性の齧歯動物は餌をとる時間が短くなり、昼行性の鳥類は、太陽が登るずっと前から鳴き始め餌を探しに出かけるようになりました。
暗い時間帯でも明るいという状況は、動物たちにストレスを与え、繁殖の回数や生まれてくる子供の数などにも影響を与えました。
一方で人工的な光の恩恵を受ける種もいました。
ある種のコウモリは数を増やし、またいくつかの植物は人工的な光によって成長が早くなりました。
全ての動植物のなかで最も人工的な光の影響を受けたのは、光に集まる習性をもつ昆虫類でした。
電灯に集まるこれらの昆虫は容易に捕食者の餌食となり、また車のヘッドライトに引き寄せられ、衝突によって命を落としました。
研究者の一人で、エクセター大学の環境学の教授であるケビン・ガストン氏は、「光の影響は微生物、無脊椎動物、動物、植物などいたるところにみられた」と述べ、人工的な光について、「気候変動などの他の大きな問題と同様に捉える必要がある」と指摘しています。
現在夜間の照明は、安価で長持ちするLEDに変わりつつありますが、LEDの波長は太陽光に似ているため、照らされる領域が増えるほど動植物にとって問題となる可能性があります。
夜間の人工的な光は、もう一つの太陽のように機能することで、動植物の行動パターンに影響を与えます。
ガストン氏は、「政府、企業、個人のいずれもが真剣に考えていないが、人工的な光は、適切に使われなければ汚染物質と同じである」と述べています。
研究結果はNature Ecology and Evolutionに掲載されました。
人工的な光に関する研究はここ5年から10年で急速に増えてるんだって
夜が明るすぎるからいろんな所で問題が起き始めてるんだね
Reference: The Guardian