ナマコの密漁が増加 インドとスリランカで行われている組織的な犯罪

自然
(Actinopyga echinites/Philippe Bourjon/CC BY-SA 3.0)

海洋生物の保護活動を行っているOceansAsiaは、インドとスリランカで多発しているナマコの密漁に関するデータを公表し、犯罪が組織的に行われている実態を明らかにしています。

 

海底に蓄積した有機物(デトリタス)を食べるナマコは、海洋生態系にとって際めて重要な種で、サンゴが生きていくための栄養素を生産し、二酸化炭素が溶け込んで起きる海の酸性化を遅らせる働きを持っています。

また肉は高級食材や漢方の材料として利用され、一部の種は中国や東南アジアで、1キロ当たり20万円以上で取引されています。

通常ナマコ漁は、漁業権を持つ漁師によって行われますが、厳しい規制のある国や地域では、領海をまたいだ密漁が頻繁に起こります。

インドとスリランカは数年前から協力し、違法なナマコ漁を取り締まっています。

 

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急増しているナマコの密漁

 

OceansAsiaは、2015年から2020年の間にインドとスリランカで確認された、120件の密漁・密輸事件を分析しました。

対象となった事件で逮捕された密輸業者は合計502人で、事件ごとでは平均4人が逮捕されました。

押収された生き物の数は104,531、総重量は64.7トンで、全体の価格は284万ドル(約3億1000万円)相当でした。

摘発はここ2年で急増しており、当局は期間中、105隻の船と7台の車両、および相当量の釣り道具とダイビング用品を押収しています。

密漁の多くは、インドとスリランカの間にあるマンナール湾で起きており、近年はより資源が豊富な南インドの海域にも広がってきています。

 

乾燥状態で売られるナマコ (Juan Carlos Martin/Flickr)

 

インドは2001年からナマコ漁を全面的に禁止しています。

一方スリランカでは、捕獲は許可されているものの、輸出には免許が必要となります。

このため密漁者はインドでナマコを捕獲した後、輸出が合法なスリランカに密輸し、産地を偽装してから東南アジアに出荷します。

こうした密漁は単発的ではなく組織的に行われており、あるケースでは、捕獲したナマコを一旦別の場所に隠しておき、別のチームが回収するといった手口が確認されています。

分析を行ったOceansAsiaのフェルプス・ボンダロフ氏は、密漁が増加している現状について、「違法な市場の近くに合法な市場がある場合、漁獲物はロンダリングされる」と述べ、近年の密漁と密輸は、高度に組織化されたネットワークを介して行われていると説明しています。

 

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2020年2月、南インドの西にあるラクシャディープ諸島で、世界で初となるナマコの保護区が作られました。

この島の海域は、マンナール湾のナマコが乱獲によって減少しているため、犯罪グループの新たな標的となっています。

ナマコの減少は海の生態系を変化させ、魚の個体数にも影響を与えます。

ラクシャディープ諸島では、近年ナマコの密漁により魚がいなくなり、漁師のなかには廃業したり、借金が返せずに自ら命を絶つ人などが出てきています。

現在インドとスリランカは、違法な取引を撲滅するため、密漁を監視するタスクフォースを結成し、島のあちこちに密漁防止キャンプを設置しています。

OceansAsiaのオペレーションディレクターであるゲイリー・ストークス氏は、「2国の協力は国境を越えた組織犯罪と効果的に戦うための鍵です。国家は罰則と制裁措置が抑止力として機能し、それらが迅速に課されることを保証する必要があります」と述べています。


インドの海域には200種類以上のナマコが生息し、このうち約20種が商業的な価値を持っています。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

見つかっていないだけで実際の被害はもっとありそうだね

かなで
かなで

ナマコは見た目で損してるけど重要な海の生き物なんだよ

 

References: OceansAsia,The Guardian