兵庫県立大学の研究者グループは、職場でのストレスを軽減する方法として、“数分間植物を見つめること”を提案しています。
日本の多くの労働者は、仕事関連のストレスを抱えていながらもそれを過少評価している傾向にあります。
植物がストレス軽減に効果的であることは、過去の複数の研究が明らかにしていますが、それらは実験室内での結果であり、また受動的な作用においてのみ証明されたものでした。
今回研究者は、植物が実際の職場環境でのストレスレベルにどのような変化を与えるのかを検証しています。
労働中に感じるストレスは、少しの間植物を観察するだけで軽減される可能性があります。
植物を観察するだけでストレスレベルが低下する
兵庫県立大学の豊田正博准教授たちの研究チームは、疲労を感じている日中の労働者のストレスレベルを測定するために、State-Trait Anxiety Inventory index(STAI)と呼ばれるツールを使いました。
STAIは40の質問で構成された心理テストで、高いスコアは不安レベルと正の相関があります。
実験は電気会社でデスクワークをしている24~60歳までの63人を対象に行われ、植物のない状況でのストレスレベルと、植物を見つめたり、世話をしたりしたときのストレスレベルとを比較しました。
参加者は最初の1週間は植物のない状況で過ごし、疲労を感じた際にはデスク上のモニターを3分間注視してから脈拍を測定しました。
次の1週間で参加者は好みの植物をデスクに置き、疲労時には3分間植物を見たり世話をしたりし、その後に脈拍を測定しました。
それぞれの実験後のSTAIの数値には、明らかな違いがありました。
植物に接していた人のSTAIのスコアはそうでない人に比べて減少し、脈拍数も低くなる傾向がありました。
脈拍数の減少は「闘争と逃走の神経」である交感神経系の鎮静を意味し、体がストレスを感じにくくなっていることを表します。
研究者は結果について、自分が選んだ植物を世話することで植物への愛情が生まれ、それがストレスの軽減に役立ったのではないか、としています。
豊田准教授は、「ストレス軽減の効果を得るために、何も考えずに3分間植物を見つめることを楽しみましょう」と語っています。
植物をデスクに置いた人の全てがストレスを軽減できたわけではありません。
一部の参加者には脈拍数の増加が認められることさえありました。
この点について豊田准教授は、植物の世話をしなければならないという気持ちと、それがうまくいかなくなるかもしれないという不安がストレスレベルを上昇させたのではないかと推測し、また何人かの参加者については、植物に慣れてしまったことが原因かもしれないと話しています。
そして、「植物や自然が人間のストレスを軽減するという証拠はあるが、同じシーンに慣れてしまえば退屈し軽減効果は長くは続かないだろう」と付け加えています。
研究結果はAmerican Society for Horticultural Science(アメリカ園芸学会)で発表されました。
ずっと座ってモニターを見つめていればストレスがたまるのも無理はない
3分だけでも効果があるみたいだから、植物の癒しの力ってすごいね~
References: CNN