ネオニコチノイド系と呼ばれる農薬は、長時間効き目があり、またピンポイントで害虫を駆除できるため、世界中で使用されています。
しかし近年、一部の国や地域では、作物の受粉に欠かせないハチに影響を与える可能性があるとして、使用が制限あるいは禁止されるようになってきました。
過去の研究では、重要な花粉媒介者であるマルハナバチの行動が、ネオニコチノイドによって狂うことが報告されています。
英国ブリストル大学の研究者は、ネオニコチノイドが昆虫に与える影響を調べるため、ミバエを使った実験を行っています。
ネオニコチノイドは、昆虫の睡眠を妨げ、花粉を得る機会を奪います。
昆虫の睡眠と行動を狂わせるネオニコチノイド
実験では、花粉を媒介することもあるミバエの種に対し、ネオニコチノイド系殺虫剤である「イミダクロプリド」、「クロチアニジン」、「チアメトキサム」、「チアクロプリド」の4つを与え、記憶力、概日リズムおよび睡眠パターンについて記録していきました。
殺虫剤の濃度は、実際の農場で使用されているものと同じです。
まず全ての殺虫剤は、ミバエの寿命を短くしました。
対照群の平均が49日だったのに対し、殺虫剤を与えたグループは寿命が10日から21日短くなりました。
また殺虫剤の影響は子孫にも及び、生存率は軒並み低下しました。
次に記憶力では、チアクロプリド以外の3つの殺虫剤において、1時間後の記憶がほとんど失われました。
花粉を食料とする昆虫にとって、匂いや花の位置といった記憶はとても重要です。
記憶が農薬によって阻害された場合、栄養を得る機会が失われてしまう可能性があります。
(Markus Trienke/Flickr)
概日リズム(体内時計)と睡眠も殺虫剤の影響を受けました。
ミバエは体内時計が狂うことで通常の睡眠ができなくなり、日中と夜間の両方で断続的に眠るようになりました。
断続的な睡眠は記憶力や行動に影響を及ぼし、花粉の獲得を困難にさせます。
殺虫剤によって影響力は異なるものの、ネオニコチノイドは確実にミバエの行動を変化させました。
日常的なネオニコチノイドの使用は、ハチを含む花粉媒介者を狂わせ、作物の安定した収穫に影響を与える可能性があります。
研究を主導したブリストル大学の生理学者キア・タスマン博士は、実験結果について、「私たちがテストしたネオニコチノイドは、ミバエとミツバチがとる睡眠の量に大きな影響を及ぼしました。昆虫が農場で使用されるのと同量の殺虫剤にさらされた場合、睡眠が少なくなり、毎日の行動リズムは、通常の24時間サイクルと同期しなくなりました」と述べています。
ハチは世界の食料生産にとって重要な生き物ですが、その数は、気候変動や生息地の減少、寄生虫などにより減少傾向にあります。
世界自然保護基金によると、野生の植物の約90%と世界の主要作物の75%が、動物の受粉に依存しており、ハチの種はこれらの大部分を占めています。
ミツバチとハエは脳内の構造が似ているため、実験によって明らかになったネオニコチノイドの悪影響は、ハチの種でも十分に起こり得ます。
タスマン博士は、「現在のミツバチはかなり動きが鈍く、餌を探すために外出することが少なくなっている」と述べ、殺虫剤の使用が続く場合、睡眠時間がとれないハチは、花粉を集めるのに苦労するだろうと指摘しています。
研究結果はScientific Reportsに掲載されました。
ネオニコチノイドはEUでは禁止されてるんだって
殺虫剤を使ってハチが働けなくなったら作物の生産力が落ちちゃうね
References: University of Bristol,CNN