スイスの研究者は、花粉の重要な媒介者であるマルハナバチ(bumblebees)の観察から、この昆虫のもつ意外な能力を発見しています。
花粉を付着させるのに適した長い体毛を持ち、一年のほとんどを花の蜜を求めて飛び回るマルハナバチは、そのふさふさの外見と大人しい性格から、農業従事者を中心に多くの人に愛されています。
しかし近年では気候変動を原因とする気温の上昇により、ヨーロッパと北米で数が減ってきているという報告があります。
開花を早めるマルハナバチの戦略
Scienceに掲載された研究は、花を咲かせていない植物に止まったマルハナバチが、奇妙な行動をする例を報告しています。
まだ花が咲いておらず花粉を得ることのできないマルハナバチは、飛び立つ前に植物の葉をかじり穴をあける動きを見せました。
マルハナバチは花粉の代わりに葉を食べたわけでも、巣の材料として持ち帰ったわけでもありません。
その後の観察によって明らかになったのは、マルハナバチに葉をかじられた植物が、そうでない植物よりも早く花を咲かせることでした。
なかには、通常時と比べ30日も開花が早まったものもありました。
温厚でふさふさの体毛をもつマルハナバチ (Dmitry Grigoriev/Flickr)
当初研究者は、葉に穴をあけるだけで去っていくマルハナバチの行動に頭を悩ませましたが、かじられた植物が花を咲かせたことでその意味に気づきました。
研究著者の一人である、スイスのチューリッヒ工科大学のマーク・メッシャー氏は、マルハナバチは意図的に植物に傷をつけていると説明し、「これは、より早く花を咲かせることで、ハチが利益を得ようとする適応である」と述べています。
研究者は状況を再現する実験も行いました。
不思議なことに人間が植物を傷つけた場合、開花速度はほとんど変わりませんでした。
一方でマルハナバチによって傷つけられた植物は、全く傷を受けていない植物よりも30日、人間が傷つけた植物よりも25日早く花を咲かせました。
この結果は、マルハナバチが何らかの分泌物を出し植物の開花を早めている可能性を示唆しています。
研究著者の一人でチューリッヒ工科大学のコンスエロ・モラエス教授は、「マルハナバチが植物に与えている特有の要素があるかもしれない」と指摘し、今後さらなる調査を行いたいと話しています。
マルハナバチは花が咲いてるときには葉に穴をあけないんだって!
植物も花粉を運んでもらいたいからマルハナバチに協力してるんだね
References: BBC