過去20年で120万人に被害 インドにおけるヘビ咬傷の実態

動物
(Renaud d'Avout d'Auerstaedt/CC BY-SA 2.5)

WHOは2030年までにヘビに噛まれること、すなわち「ヘビ咬傷 (へびこうしょう)」による死者数を半減したいと考えています。

現在世界では毎年270万件のヘビ咬傷の報告があり、そのうちの8万から13万人が命を落としています。

ヘビによる被害の多くはアジアやアフリカ、ラテンアメリカといった途上国に集中しているため、その重大さが見落とされる傾向にあります。

世界の科学者やヘビの専門家は現地の人々への支援を積極的に行っていますが、新しい報告書によると、ヘビによる被害を減らすにはまだまだ時間が必要です。

 

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インドのヘビ咬傷の被害者数は世界全体の約半分を占める

 

イギリスやカナダなどの国際的な研究者グループは、インドでの過去20年のヘビ咬傷による死者数が推定120万人であると報告しています。

この数字は2001年から2014年までに起こった611,483件の死亡事故に関するデータと、2000年から2019年までに報告されたヘビ咬傷の事例87,590件から導き出されました。

 

ヘビ咬傷による年間の死亡者数は58,000人であり、そのほぼ半数が30~69歳の年齢ゾーンでした。

また4分の1が15歳未満の子供で、事故の大多数は農村部の家庭で発生しました。

 

死亡の直接の原因となった毒蛇のうち、最も危険な種は次の3つでした。

 

ラッセルクサリヘビ

 

インドと南アジアに生息するラッセルクサリヘビは非常に攻撃的な毒蛇で、噛まれるとしばしば致命的な結果になります。

げっ歯類を餌としているため、民家で遭遇する確率が高いのも被害の多さに結び付いています。

インドで恐れられている4つの毒蛇「ビッグフォー」の1種です。

(Evy K/Flickr)

 

アマガサヘビ

 

(Jayendra Chiplunkar/CC BY-SA 3.0)

アマガサヘビは日中はおとなしい性格ですが夜には好戦的になります。

体長は1.8m近くまで成長し、少量でありながらも致命的な毒を持っています。

ビッグフォーの1種。

 

インドコブラ

 

夜に動きが活発になるインドコブラ(トップ画像のヘビ)は、農村部などの人の生活圏に出現します。

噛まれると内出血を起こし、周辺の組織が壊死します。

ビッグフォーの1種。

(ビッグフォーの残りの1種「カーペットバイパー」も、非常に攻撃的かつ強力な毒を持っており恐れられています)

 

どのヘビも噛まれると致命的で、迅速な治療を受けたとしても重大な後遺症が残る場合があります。

 

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ヘビ咬傷による被害の約7割が8つの州で起きています。

これらの州は総じて海抜が低く、農村地帯を抱えています。

2015年の統計では、この8つの州には2億6,000万人が住んでおり、そのうち最もヘビの被害を受けやすい地域には400万人が暮らしています。

インド人が70歳までにヘビに噛まれて亡くなる確率は全体では250分の1ですが、これらの地域ではほぼ100分の1になっています。

研究者はヘビ咬傷のリスクを低減させるためには、農業従事者に対する教育や、地元の開業医との協力が必要だと指摘しています。

 

インドのヘビ咬傷に関するレポートはeLifeに掲載されました。

 


 

 

ふうか
ふうか

ヘビ咬傷の被害に共通するのは貧しい農村地域という点のようだな

しぐれ
しぐれ

政府が支援しないとこの問題はなかなか解決しないかもしれないね

 

References: BBC