国連は26日、世界の中古車の動向を分析した報告書を公表し、状態の悪い車両が大量に発展途上国に流れ込んでいる実態を明らかにしています。
運輸部門は、世界で排出される温室効果ガスのうちの約4分の1を占めており、先進国では近年高いレベルの排出規制が導入されるようになってきました。
一方で、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの途上国の多くは、中古車の輸入と使用に関して厳格な規制を設けていません。
現在中古車を最も輸出している国と地域は、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本です。
環境を汚す古い車両は途上国に輸出されている
国連環境計画(UNEP)が発行した「中古車と環境」と題されたレポートは、世界146ヵ国を対象に、2015年から2018年までの中古車の輸出入についてまとめています。
期間中、約1400万台の中古車(自動車や小型トラック)が世界各地を行き来しました。
ほとんどの中古車はアメリカ、ヨーロッパ、日本からのもので、このうちの約80%がアフリカを含む低中所得国に到着しました。
中古車を最も多く輸入したのはアフリカ諸国(40%)で、東ヨーロッパ(24%)、アジア太平洋地域(15%)、中東(12%)、ラテンアメリカ(9%)と続きます。
国ごとの詳細な調査では、中古車の年代によって輸出先が変わる傾向が明らかになっています。
146ヵ国のうち約3分の2は、自動車が出す有害物質に対する規制が「弱い」か「非常に弱い」状態にありました。
これらの国は、先進国では規制対象となる古い年式の車も受け入れています。
例えば、西アフリカのガンビアに輸出された中古車の年式は、平均で2001年前後でした。
またナイジェリアに輸出された中古車の4分の1は20年前の年式でした。
古い車は大気汚染物質である「PM2.5 (微小粒子状物質)」と「NOx (窒素酸化物)」をより多く排出します。
これは現地の人々の健康を脅かすだけでなく、世界の公衆衛生上のリスクにもつながっていきます。
(misskodak/Pixabay)
質の悪い中古車は別の問題も含んでいます。
調査では、中古車に対する規制が弱い国ほど事故の件数が多く、それに伴う死亡の割合も高くなることが明らかになっています。
一部のアフリカの国は、輸入される中古車の年代に制限がありません。
こうした国にやってくる車のなかには、高価な部品をあらかじめ抜き取り別の部品に取り換えているものもあります。
純正の部品が少なく、整備も行き届いていない車が安全でないのは明白です。
ヨーロッパの場合、状態の悪い中古車のほとんどは、オランダの港からアフリカなどの規制の弱い国に向けて輸出されています。
UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は、「先進国は何年にもわたって中古車を発展途上国に輸出しており、これらの多くは規制なしで行われている」と述べる一方、問題は輸出する側だけでなく受け入れる側にもあると指摘しています。
途上国に向かう中古車の多くは、輸出国の環境や安全基準を満たしていないために行き場がなくなった車両です。
これらの車は世界の国々が共通の規制を取り入れていれば、廃棄されるはずのものです。
しかし現状、環境を汚染する中古車は途上国で活発に取引されています。
アンダーセン氏は、「先進国は自国の環境基準に合格しない車両の輸出を停止するべきだが、輸入国もより強力な基準を導入する必要がある」と強調しています。
ヨーロッパの中古車の主な輸出拠点であるオランダは報告書について、「これらの結果は、ヨーロッパから輸出される中古車の品質を改善する必要性を示している」としつつも、「この問題はオランダだけで解決することはできず、ヨーロッパとアフリカの政府間での協力が欠かせない」と述べています。
アフリカには中古車の輸入に先進国並みのルールを適用している国もあるみたいだよ
大気汚染や気候変動は世界規模だから、規制も共通のものが必要になってくるな
Reference: UNEP