全米経済研究所は、温室効果ガスの排出が今後も削減されなければ、世界の経済は大きなダメージを受けると報告しています。
地球の平均気温は工業化が始まって以降1℃上昇しており、今後もこの傾向が続いた場合、現在暑い地域はさらに暑くなり人が住めなくなるおそれが出てきます。
これは労働人口の減少をもたらし世界の経済に悪影響を与えます。
レポートは、気候変動が世界全体で取り組むべき課題であることを強調しています。
気温の上昇は熱帯地域における死因の一つになる
全米経済研究所が7月に発行したレポートは、世界40か国のデータを元に、気候変動と死亡リスクとの関連や、気温上昇が続いた場合の世界の経済動向などについて分析を行っています。
分析では、温室効果ガスが今後どの程度削減されるのかについていくつかのシナリオを想定し、それを33の気候シミュレーションと組み合わせました。
現在世界の国々は、2050年までに温室効果ガスの排出を抑えるため様々な政策を推進していますが、目標が達成されるかは未知数です。
高排出シナリオ、すなわち温室効果ガスの削減がほとんど行われない場合、2100年には地球の平均温度が3℃上昇する可能性があります。
レポートの高排出シナリオでは、気温上昇を原因とした死亡者数が増加しました。
世界全体では2100年までに10万人あたりの死亡者数が73人になり、現在既に気温上昇に苦しんでいるガーナ、バングラデシュ、パキスタン、スーダンのような国では200人以上に達しました。
気温上昇によって失われる労働力は、世界のGDP約3.2%に相当します。
また気温上昇は将来的に、結核やエイズ、マラリア、デング熱、黄熱などに並ぶ、熱帯地域での死因の一つになります。
気候変動の影響を最も受けるのは貧しい国の人たち
バングラデシュのジャフロン (Miguel Navaza/Flickr)
気候変動による気温の上昇は、寒冷地域や経済大国にとってはそれほど深刻ではありません。
一方で熱帯地域は生存が危うくなるほどの影響を受けます。
現在赤道付近に位置している国の多くは貧しく、エアコンなどの冷房機器を先進国レベルで使用することができません。
レポートの執筆者の一人で、シカゴ大学の環境経済学者であるアミール・ジーナ氏は、「豊かな国はたとえ死亡率が増加したとしても、高温に適応するための費用を払うことができるが、貧しい国の人々はそうではない」と指摘し、「実際に気候変動に苦しんでいるのは、温室効果ガスの排出にそれほど関わっていない人たちである」と述べています。
レポートは気候変動が経済に与える損失について、中程度の排出シナリオでは、二酸化炭素1トンあたり17.1ドル、高排出のシナリオでは36.6ドルになると試算しています。
これらの数値は従来の予測を大幅に超えるものです。
ジーナ氏は、「最悪のシナリオでは、多くの人が移住するといった思い切った対策が必要になるかもしれない」と述べ、人々に、気候変動を理解しその影響を軽減するための行動をとるよう訴えています。
暑い地域がもっと暑くなったら経済も停滞しちゃうよね
豊かな国の二酸化炭素が貧しい国の命を奪う……
References: The Guardian