海洋のマイクロプラスチック汚染の危険性が指摘されるなか、最近も、洗濯機で洗った服から大量のプラチスックが海に流れ出しているという研究結果が報告されています。
安価で便利なプラスチック製品は身の周りに数えきれないほど存在し、それらは私たちが知らないうちに環境を汚染してしまう原因となっています。
先日イギリスの慈善団体が行った調査によると、クリスマスの時期にプレゼントされる「クリスマスセーター」の素材には、多くのプラスチックが含まれています。
セーターはクリスマスのときだけ着られ、それ以後ほとんどが忘れ去られていきます。
アクリルの衣服を洗濯すると大量のマイクロファイバーが環境に放出される
イギリスの慈善団体「Hubbub」は、分析した108枚のクリスマスセーターの95%が、完全に、または部分的にプラスチック材料で作られていると発表しました。
これらのセーターは、11のイギリスの大通りとオンライン小売店から購入されたものです。
購入したセーターの素材で最も多かったのがアクリルで、全体の44%がアクリル素材100%で出来ていました。
また全てのセーターの4分の3が、ある程度のアクリルを含んでいることもわかりました。
英国プリマス大学による2016年の調査では、アクリルは、ポリエステルやポリエステルと綿の混紡製品に比べて、洗濯時のマイクロファイバーの放出量が多いことがわかっています。
データは、アクリルの衣服を洗濯するごとに、約730,000本のマイクロファイバーが放出されることを明らかにしました。
そのためHubbubは、アクリルで出来ていることの多いクリスマスセーターは「海洋のプラスチック汚染の問題に追加される可能性が高い」と警告しています。
日本ではあまりなじみのない習慣かもしれませんが、イギリスでは多くの人たちが“既にセーターを持っているにもかかわらず”、クリスマスのお祝いのために新たなセーターを購入します。
Hubbubの試算によると、1,200万人がクリスマスシーズンに向けてセーターを購入する一方、5人に2人がそれを休暇期間中に一度しか着ません。
つまりクリスマスセーターはイベントのために着られた後は、たんすの肥やしになるか捨てられていることになります。
Hubbubのプロジェクトコーディネーターである、サラ・ディバル氏は「ファストファッション(※)は自然界にとって大きな脅威であり、クリスマスジャンパーにはプラスチックが含まれているため特に問題がある」と述べ、セーターやジャンパーなどの衣服は“クリスマスのためだけ”でなく、長く着るためのものであるべきだと付け加えています。
(ファストファッション――短いサイクルで安価な衣料品を大量生産、大量販売する業態)
またHubbubは環境問題に取り組むため、クリスマスのセーターを新たに買わず、友人と交換するか中古品を購入するよう勧めています。
先日行われた研究では、洗濯機の洗い方モードの違いによって海に放出されるマイクロプラスチックの量に違いが出ることが判明しています。
衣服を洗わないわけにはいかないため、洗濯による環境への影響をゼロにするのは不可能なことです。
しかし衣料業界は年間で4,200万トンもの合成繊維を生産しています。
そしてそのうちの80%はポリエステルで出来ていて、アクリルと並んでマイクロファイバーを環境に放出する主な元凶となっています。
マイクロファイバーによる環境汚染問題の背景には、今回指摘されたようなファストファッション――すなわち、一時の流行を追うためだけに安価で大量生産された衣服の存在があります。
海や環境へのプラスチックの影響を抑えるためには、消費者の意識だけでなく、イベントにかこつけて商品を売ろうとする業界側の意識にも変革が必要です。

イギリスの人はセーターに思い入れがあるみたいで、クリスマスの時には競ってヘンな柄のセーターを着るんだって

おかしなセーターをクリスマス後にも着るのはさすがに無理……

環境のことを考えたら服もリサイクルしていくのが一番かもねー
References: CNN